株式市場は債券金利の落ち着きを待つ展開か

 前述した期待インフレ率上昇を受けた債券金利の上昇が株式市場の重しとなっている状況は否めません。従前に本稿でご説明したとおり、「株価は将来想定される企業利益(キャッシュフロー)の割引現在価値に近い」とされ、割引率に大きな影響を与える債券金利の上昇は今後も株価の下押し圧力につながりやすいことに注意が必要です。

 図表3は、S&P500種指数とその上値抵抗線と下値支持線、債券金利(2年国債利回りと10年国債利回り)の推移を示したものです。1月まで落ち着いていた債券金利が2月に一転上昇(債券価格は下落)基調となったことで、S&P500種指数はフシ目とされた4,000ポイントを下回り、節目とされる下値支持線や注目度が高い200日移動平均線(3,940ポイント)に迫っています。

 債券金利が一段と上昇し、S&P500種指数が200日移動平均線を下回れば、失望売りがかさむことで下値メドが3,800ポイント程度まで切り下がるリスクも否定できません。

<図表3>債券金利の上昇が株式の重しとなっている

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年2月22日)

 ただ、先物市場で切り上がってきた政策金利のターミナルレート(政策金利の到達点)予想を市場が織り込み、利下げの後ズレがコンセンサスとなれば、債券金利の上昇が一服して株式がいったん下げ止まる可能性はあります。

 いずれにせよ、市場は目先のインフレ期待上昇を受けた債券金利と景気見通し(業績見通し)の綱引きで揺れる展開となりそうです。ただ、2024年に向けた景気回復や業績見通し改善を見込むのであれば、いまだ「長期投資に分があり」と思われます。目先も株価が下落する局面があれば、押し目買いや積み増し買いが適切であると見込んでいます。

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