S&P500種指数は中期的な上値抵抗線をブレイクした

 米国市場では、前週にFOMC(米連邦公開市場委員会)を通過した直後に、多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種指数は今年に入ってからの高値を2日連続で更新しました。その後は、3日に発表された1月雇用統計が予想以上の強さをみせたことで債券金利が反転上昇。

 株式市場にも利益確定売りが広まりました。注目されていたパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の対談イベント(7日)や他FRB高官によるタカ派発言にも揺さぶられ、株式も債券も上値の重い展開を余儀なくされました。

 図表1は、シカゴ連邦準備銀行が算出している「金融環境指数」(Financial Conditions Index)とS&P500の推移を示したものです。S&P500は昨年から株価の重しとなっていた「上値抵抗線」(レジスタンスライン)をブレイクしました。同時に、昨年初から10月までの下げ幅の3分の1超を取り戻したことになります。

 金融環境指数は、米国市場を取り巻く金融環境の引き締まり度合いを示します。同指数は昨年10月から低下(金融環境は改善)しており、米国株の底入れ基調を下支えしているようにみえます。昨年秋以降の株式復調は、金融環境改善に伴う「ミニ金融相場」とも言えるでしょう。

 一方、2022年10-12月期の決算発表(大手500社のうち315社が発表した8日時点)を総括すると、売上高総額は前年同期比5.3%増収、純利益総額は同3.1%減益とさえません。中でもハイテク大手5社は軒並み減益となりました。業績見通しの悪化が当面の株式に影響を与える可能性を否定できない点に警戒を要します。

<図表1>S&P500指数は上値抵抗線をブレイクした

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年初~2023年2月8日)