IMFは世界経済のソフトランディングを示唆

 米雇用統計が「予想以上の強さ」を示す直前に、IMF(国際通貨基金)は新たな世界経済見通し(World Economic Outlook)を発表して注目されました。3カ月ぶりに改訂された最新見通しでIMFは、2023年における世界の実質GDP(国内総生産)成長率を前回の+2.7%から+2.9%へと0.2ポイント上方修正しました。

 IMFが世界経済の成長率見通しを引き上げたのは、ロシアがウクライナに侵攻して以降約1年ぶりとなります。

 図表3は、IMFが示した主要国(地域)別の実質GDP成長率の実績と予想(2023年と2024年)を示したものです。今回の改定値では、米国、中国、ユーロ圏、日本などほぼ全ての国(地域)の2023年成長率予想が上方修正されました。

 こうした見通し改善を受け、世界経済が2023年のスローダウンを経て2024年の回復に向けソフトランディング(軟着陸)するとの見方が強くなってきました。

<図表3>IMFは2023年の世界成長率見通しを上方修正した

(出所)IMF(国際通貨基金)より楽天証券経済研究所作成(2023年1月末) 

 IMFの見通しで注目すべき点は、中国の成長率が2022年の+3.0%(実績)から2023年は+5.2%へと回復すると予想されたことと、経済規模で世界5位を誇るインドの成長率が+6%超の高成長を続けると予想されている点です。2023年の世界成長率(+2.9%)の約半分は、中国とインドの2カ国が寄与するとされています。特に人口と経済でインドの存在感は増しています。

 国連の推計によると、インドの人口は現在14億2,200万人で、中国の政府推計人口を上回り世界1位となりました。高成長が続き、2020年代中にドイツと日本を抜き「世界3位の経済大国」となる公算が高いと見込まれています。

 インド株式市場は最近、新興財閥アダニ・グループの不正会計疑惑の影響で不調を余儀なくされましたが、長期視点ではファンダメンタルズ面での高成長期待を反映して堅調傾向に回帰すると予想しています。

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