先物市場の政策金利見通しが上方シフト

 上述したとおり、主要マクロ指標の中で市場予想平均を上回る数字が増えたため、米国経済の先行きを巡る悲観が後退し、ディスインフレ(インフレ率の減速)ペースが鈍化しているとの観測も浮上したため、2月以降はFRB高官のタカ派寄り発言が増えてきました。換言すると、市場は利上げ長期化観測を織り込み始めたと言えます。

 図表3は、金利先物市場で試算されているFOMC(米連邦公開市場委員会)日程ごとの政策金利見通しについて、1月雇用統計発表直前(2月2日)と直近(2月22日)における予想金利軌道を比較したものです。

 政策金利見通しが切り上がってきたことが分かります。市場が見込んでいるターミナルレート(政策金利の到達点)は0.5ポイント程度上方シフトし、1月まで想定されていた利下げ期待が後ズレしたことを示す形状です。こうした市場の政策金利見通しの変化が、債券市場の価格形成(金利上昇)に影響を与え、株価の上値を抑えています。

<図表3>先物市場の政策金利見通しが切り上がった

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年2月22日)

 当面も、利上げ継続に対する警戒感で株式市場は神経質な展開が続きそうです。市場は、3月8日に予定されているパウエルFRB議長による議会証言、10日に発表される2月・雇用統計などのマクロ指標、3月14日に発表されるCPI、3月21、22日に開催されるFOMCとSEP(経済・金利見通し)改定の結果を材料視すると考えられます。

 債券市場が当面の利上げ継続観測を消化して利回りが安定するか、景気の底堅さが先行きの業績見通しの改善に寄与するかを見極めたいと思います。

 筆者は、今後のディスインフレ継続と来年に向けての米景気回復を見込んでおり、米国株式は年後半に復調傾向をたどると予想しています。S&P500種指数は今週、節目とみなされていた4,000ポイントを一時的にせよ割り込みました。

 債券金利が一段と上昇すれば、次の下値めどである200日移動平均線(3,940)を試す可能性も否定できません。ただ、目先の株価調整については「押し目買い」や「積み増し買い」の好機となる可能性が高く、「長期投資に分があり」と考えています。


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