米中の経済サプライズ指数が急上昇

 マクロ指標を巡る事前の市場予想と実績値とのギャップ(サプライズ)を示す「経済サプライズ指数」をみると、中国では今年に入ってから上向き、米国でも2月に入ってから上昇しています(図表2)。これは市場予想との対比で経済指標の発表がおおむね強かったことを示し、短期的には中国も米国も経済成長を巡る悲観が後退しつつある状況を示唆しています。

 実際、中国では「ゼロコロナ政策」(行動制限措置)が解除され、春節(旧正月)を挟んで人流や生産活動が回復基調となっています。共産党政府による景気対策の効果もあり、中国経済の持ち直しを見込む向きが増えています。

 IMF(国際通貨基金)は1月末に発表したWEO(世界経済見通し)改訂版で、2023年の中国の実質GDP(国内総生産)成長率を+5.2%に0.8ポイント上方修正しました。中国の内需や生産活動が復調を強めれば、(すでに銅価格の回復などに見られるように)、各種商品市況の上昇につながる可能性もあり注目されています。

<図表2>米国と中国の景況感が急改善した

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2022年2月~2023年2月22日)

 米国では、2月に入り発表された1月・雇用統計、小売売上高、2月・ミシガン大学消費者マインド指数、1月のCPIおよびPPIなどが市場予想平均を上回り、経済サプライズ指数の反転上昇に寄与しました。

「Good news is bad news」(良いニュースは時として悪材料となる)との格言通り、予想を上回るマクロ指標が増えたことで、米国債利回りは上昇(債券価格は下落)しました。

 一方、景気の底堅さがさらに鮮明となれば、FRBや市場が憂慮していたリセッション(景気後退)の可能性が低下する可能性もあり、個人消費や企業業績見通しにはプラスとなります。最近は、マクロ指標の底堅さを反映し、「米景気はノーランディング(無着陸)に向かう」との強気な見方さえささやかれるようになりました。