10-12月の業績悪化、一時的要因

 世界景気減速の影響で、日本企業の10-12月期決算は不振でした。ただし、一時的な減益要因が多く、来期にかけて増益が続くとの見通しは変わりません。以下、四つの減益要因については、一時的と見ています。

【1】電力産業が赤字転落

 燃料費が大幅上昇したのに対し料金引き上げが遅れる「期ずれ」要因などによって、赤字に転落します。

 電力10社(東電・中部電・関電・中国・北陸・東北・四国・九州・北海道・沖縄)合計で、今期(2023年3月期)純利益は、会社予想で約1兆円の赤字(▲9,926億円)です。来期(2024年3月期)は、約8,000億円の黒字に転換する見込みです。

【2】石油精製・石油化学などで「在庫評価損益」が悪化

 ENEOS HD(5020)は、今期(2023年3月期)純利益が、会社予想で前期比▲74%減益の1,400億円となります。石油精製業には、法令で70日以上の原油備蓄義務が課せられていますが、原油価格が急騰する時は、そこに「在庫評価益」が、原油価格が急落する時は「在庫評価損」が生じます(総平均法による原価調整を通じて損益に影響)。

 2022年の後半に原油価格が下落したことにより、今期在庫評価損益が悪化する影響が、今期の減益に影響しています。ただし、これは一時的な損益です。

 石油化学産業などでも、同様の在庫影響が発生し、今期の業績が悪化しています。

【3】中国のロックダウンで生産が滞った影響

 中国で昨年11月までゼロコロナ政策をとっていた影響で、日本の製造業は工場停止やサプライチェーン混乱の影響を受けました。それが10-12月の損益を悪化させました。

 ゼロコロナ政策は12月以降、大幅に緩和され、今は事実上撤廃されました。ゼロコロナ撤廃の恩恵で、中国では人の動きが活発になり、経済再開で中国景気が急速に回復してくる見込みです。

【4】PC・スマホ・半導体関連が失速

 コロナ禍のリモートワーク・ブームで、PC・スマホ・半導体関連に特需がありました。その特需がはげ落ちた影響で、村田製作所(6981)東京エレクトロン(8035)などが今期(2023年3月期)業績予想を下方修正しました。

 この影響は一時的とはいえず、来期(2024年3月期)にも影響が残ると考えられます。ただし、半導体への需要拡大は続くので、2024年には在庫調整を終えて、回復に向かうと予想しています。

日本株の投資判断

 日本株の投資判断は変わりません。日本株は割安で長期的に良い買い場を迎えていると考えています。足元、業績下方修正が増えていますが、一時的要因が多いと見ており、日本株に対して強気の見方を変える必要は無いと考えています。

 ただし、米利上げが続くことによる短期的なショック安はまだあるかもしれません。時間分散しながら割安な日本株を少しずつ買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えています。

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