市場と対話しない日銀

 金融政策の変更によって金融市場がショックを受けないように、欧米では中央銀行がマーケットと対話する努力をしています。まず、金融政策変更についての考え方を、繰り返し市場に流し、市場の反応を見ます。

 市場は、中央銀行のメッセージを受けて、将来の政策変更を少しずつ織り込んでいきます。最終的に、政策変更を発表した時には、織り込み済みで、市場がほとんど反応しないことを理想としています。

 FRBの市場との対話の仕方にもまだ改善余地がありますが、それでも政策を変更した時に、市場に大きなサプライズが起こってはいないという意味では、対話に成功しているといえます。

 これに対して日銀は、伝統的に秘密主義を貫いてきました。金融政策の変更を予知されないように秘匿してきたので、政策変更はサプライズを伴うことが多かったと言えます。

 黒田総裁は、2013年4月の着任時に、マーケットと対話する開かれた日銀を目指すと宣言しました。あれから9年、確かに黒田総裁は、マーケットに強烈なメッセージを出し続けてきました。

 ところが、一見、明解に聞こえる黒田語録ですが、肝心な政策変更については、予断や言質を与えないように、いつも巧妙に秘匿されています。その結果、市場は、黒田総裁の真意をいつも読み間違えます。日銀会合の結果発表直後に、市場が荒れることがよくあります。