日経平均が急落する中、なぜ銀行株が急騰?

 20日の東京株式市場で、日経平均が急落する中で、メガ銀行株など金融株が急騰しました。金利上昇は、株式市場にとってネガティブですが、金融株にとってはプラスと見られているからです。

 日本および世界の銀行株はこれまで、世界的に金利低下が進む都度、売られてきました。金融株は、「金利が低下すると利益を出しにくくなる」というイメージがあるからです。

「金利が低下すると利益を出しにくくなる」というイメージは、正しい面と間違っている面があります。詳細な説明は割愛しますが、低金利は一般的に金融株の収益に、以下の影響を及ぼします。

【1】生命保険

 終身生命保険の引き受けが大きい生命保険会社にとって、長期金利が低下すると、保険契約の価値が低下します。長期金利が上昇すると、保険契約の価値が増加します。したがって、上場している生命保険会社の株は、金利下落で売られ、金利上昇で買われる傾向が顕著です。
 ただし、終身生命保険の引き受けが少なく、多角化(医療保険や海外事業)が進んでいる生命保険会社では、国内金利変動の影響が相対的に小さいところもあります。

【2】銀行

 長期金利が低下すると、国内の商業銀行業務の収益性が低下します。したがって、銀行株は、金利が低下すると売られ、金利が上昇すると買われる傾向があります。
 ただし、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)などのメガ銀行は、多角化(海外事業、投資銀行業務、信託業務など)が進んでいるので、低金利でも高収益をあげるビジネスモデルができています。したがって、メガ銀行株は金利低下で売られる必然性はないのですが、それでも、メガ銀行株も金利が低下すると売られ、金利が上昇すると買われる流れが続いています。

【3】損害保険

 損害保険契約は1年契約がほとんどで、生命保険のように何十年にも及ぶ長い契約はありません。したがって、生命保険のように、金利低下によって運用が逆ざやになるリスクはほとんどありません。
 したがって、損害保険株が、金利低下で売られ、金利上昇で買われる必然性はありません。それでも、現実には、銀行株や生命保険株のように、金利低下で売られ、金利上昇で買われる傾向があります。
 なお、大手損保が、多角化で展開している生命保険事業(例えば東京海上ホールディングスが展開している東京海上あんしん生命)については、金利変動の影響を受けます。

 以上説明した通り、金融株全般に、金利低下で売られ金利上昇で買われる傾向があります。20日の東京市場では、日銀が長期金利の上昇を容認したニュースに反応して、日経平均が急落する中で、金融株が急騰しました。