全米ガソリン価格平均の下落に注目

 とは言うものの、インフレの先行きについては、粘着的に上昇している賃金、住居費(帰属家賃)、サービス価格の伸びが鈍化するまで「油断大敵」との見方もあります。こうした中、消費者の「インフレ予想」に大きな影響を与えるとされるガソリン価格と原油先物相場の下落基調を図表3で確認してみたいと思います。

 一般的に「車社会」として知られる米国にとり、ガソリン価格の変化は重要と考えられるからです。全米自動車協会(American Automobile Association)の調査によると、直近の全米ガソリン価格平均は1ガロン(=約3.8リットル)当たり3.3ドル台(7日)で、本年6月につけた5ドル台から下落基調となっていることがわかります。

 本年春ごろに4ドル前後で推移していた状況と比べると、(現水準が続くと想定すれば)来年前半におけるガソリン価格の前年同月比伸びはマイナス圏となることが見込まれます。ガソリン価格下落の主因となっている原油先物相場の下落は、中国での新型コロナウイルス感染再拡大や米国の利上げ基調による景気鈍化観測などを背景とした需給緩和観測が影響しています。

 また、G7(主要7カ国)とオーストラリアは12月5日、EU(欧州連合)とともにロシア産原油に「1バレル60ドルの価格上限」を設定する措置を実施。ウクライナ情勢に関わる欧米諸国による対ロシア制裁が原油相場の高騰を防ぎ、プーチン大統領がロシアで戦争を遂行するための資金源を断つための要(かなめ)となる対応として注目されています。

 こうした状況を反映したガソリン価格下落は今後の消費者や金融市場のインフレ予想の落ち着きに寄与していくと思われます。市場のインフレ予想がピークアウト感を鮮明にすれば、債券市場の金利の安定や低下が促され、株価復調の下支え要因となることが期待できると考えています。

<図表3>全米ガソリン価格平均の下落基調に注目

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2022年初~2022年12月7日)

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