気候変動問題の「溝」当事者たちのホンネは?

 気候変動問題における「溝」は、「先進国かつ消費国」、「新興国かつ消費国」、「化石燃料生産国」、「異常気象により危機に直面している経済規模が小さい国」などの当事者が存在し、それらの思惑が異なっていることで生じていると考えられます。

・先進国かつ消費国:リーダーシップを発揮したい。技術革新の場(ビジネスチャンス)でもあるため、気候変動問題に積極的に取り組みたい(経済発展はあきらめない)。

・新興国かつ消費国:目先の国の維持・発展が最優先。石炭火力の利用は欠かせない(現在の先進国もそうして発展したではないか。われわれにもその権利はあるだろう)。

・化石燃料生産国:化石燃料の消費を急に削減されては困る。何らかの経済的・政治的なメリットを要求したい(先進国も早急な化石燃料の消費削減はできないのではないか。消費減少懸念で化石燃料の国際価格が下がったら、減産を示唆して高値を維持しよう)。

・異常気象により危機に直面している経済規模が小さい国:海水面が上昇したり、農産物の生産量が減少したりしている。これはわれわれのせいではない(化石燃料を使わない時代に戻ればよいではないか。なぜそんなにぜいたくな暮らしがしたいのだ。この問題は人類共通の問題ではない)。

 いずれの主張ももっともであり、もっともであることは、それだけ歩み寄りが難しい(「溝」が埋まりにくい)と言えます。

 まだ、気候変動問題が「人類共通の課題」になりきれていないと言えそうです。

 そうした事態を、気候変動問題が人類共通の問題であることを確認した上で、できるだけ化石燃料を使わないようにしながら(適応)、「資金」や技術で補い合おう、そしてそれに時間的な期限を設けて実行しよう、こうしたプロセスを進めていく上で、少しずつ歩み寄ろう、というのが「パリ協定」の本質なのだと、考えます。