1年前の「COP26」での涙

 1年前、英国のグラスゴーで開催された「COP26」では、開催期間が1日延長され、「グラスゴー気候合意」が採択されました。それにより、抑えるべき気温の上昇幅を「2度未満」としたパリ協定よりも踏み込んだ「1.5度未満」が、事実上の共通目標になりました。

「1.5度未満」が明記された内容で合意できたことは「歴史的」とされた一方、「妥協の産物」ともされました。合意直前で文言が修正されたためです。議長が想定した「石炭使用の段階的な廃止の加速を呼びかけ」という文言に待ったがかかったのです。

 屈指の化石燃料生産国であるサウジアラビアの代表は、「特定のエネルギー資源に偏見を持つべきではない」、屈指の火力発電向け石炭消費国であるインドの代表は、「途上国には化石燃料の使用を続ける権利がある」などと、当初の議長の想定に待ったをかけました。

 これを受け、議長は文言を、「石炭使用の段階的な廃止の加速を呼びかけ」→「排出削減対策が取られていない石炭火力発電の段階的な廃止」→「(同)段階的な廃止のための努力を加速する」→「(同)段階的な削減」と、表現を大幅に弱め、ようやく合意に至りました。

 会の最後、議長は涙ぐみました。化石燃料の中でも燃焼時の温室効果ガス排出量は比較的多い「石炭」の「廃止」を、合意文書に盛り込みことができなかったためです。

「パリ協定」が気候変動を「人類の共通の関心事」として、対策を進める上で人権や世代間の均衡など、多岐にわたる配慮をする必要があることを前提としているため、容易に合意にこぎつけることはできません。

図:英国グラスゴーで開催された「COP26」(2021年)

出所:筆者作成