アフリカが舞台でも「適応」の話は進まない?

 パリ協定における「適応」を前進させることが、いかに難しいかを痛感されられたのが「COP26」でした。現在、「石炭」はウクライナ危機をきっかけに欧州で発生している玉突き的なエネルギー供給不安の影響を受けています。

「欧州がロシア産の天然ガス・原油を制裁のために買わない姿勢を示していることで域内のエネルギーの需給がひっ迫」→「発電向けの石炭需要増加観測浮上」→「天然ガス・原油とともに、石炭の供給不安が世界に拡大」という具合です。

 とはいえ、今回の「COP27」はアフリカが舞台です。異常気象の影響で食糧生産の減少が目立っているアフリカは、パリ協定の前文にある「影響を受けやすい状況にある人々」と考えられます。その意味では、「COP27」では、「資金」の面で大きな合意ができるかもしれません。

 アフリカという舞台であるため、支援をする側も支援を受ける側も、歩み寄りやすいと考えられます。

 しかし、気候変動問題の根本の根本である、どれだけ化石燃料を使用しないようにするかが問われる「適応」では、気候変動対策において、引き続き世界に「溝」が存在することを、改めて確認することになる可能性があります。

 ウクライナ危機下ゆえ、世界から石炭、原油、天然ガスを段階的に取り上げる議論を行うことは、先進国にとって都合が悪く、さらにはインドなどの新興国では石炭消費の重要性を、化石燃料の生産国では化石燃料そのものの重要性を訴えやすい状況にあるため、今回のCOP27でも、気候変動問題の根本の根本に踏み込んだ合意はできない可能性があります。

「資金」面の大きな成果が「適応」面の成果のなさを覆い、問題が先送りされてしまうことに気が付きにくくなる事態すら、発生するかもしれません(支援する側も受ける側も「資金」面の合意に満足するものの、エネルギー問題をめぐる「溝」は一向に埋まらない)。

図:「COP27」で予想される「適応」と「資金」の展開

出所:筆者作成