投資信託は自由で楽しい!アイデア次第で低コストファンドもつくれる!

――S&P500と金の相性がいいのはわかりましたが、それでもダメという局面はあるのではないのでしょうか? 苦手な相場があれば教えてください。

有賀 「キャッシュ・イズ・キング」、現金以外は全部ダメという局面はあるものです。リーマンショック直後やコロナショックのときなど、米国債ですら売られる時期がありました。そういったときは株も金も売られてしまう可能性があります。

 また、金という商品は金利がつかないので、金利の動きと比較されやすい資産です。金はインフレに強い商品といわれますが、金利が高いと株もダメ、金利がつかない金も値動きが一時的に低迷する可能性は否定できないと思います。

 半面、金はマイナス金利になると買われやすい面もあります。現金を持っていても少ししか金利がつかない、逆に金利をとられてしまう、という状況になると、「だったら、金利はつかないものの、永遠の価値がある金に投資したほうがいいのではないか」ということで人気が集まるからです。

 つまり、インフレだけでなく、デフレにも対応できる。それが金のおもしろさといえます。

篠田 単純なインデックスファンドだけでなく、投資信託にはさまざまな選択肢があります。投資信託の仕組み自体をもっと活用した商品が出てきてもいいと思いますね。

有賀 「半々」と考えたら、S&P500のファンドと金のETF(上場投資信託)などを半々で買うのが基本でしょう。でも、投資信託ならレバレッジを利かせることでS&P500と金を二段重ねにすることもできる。しかも、少額でです。

 投資信託という金融商品のおもしろさに気づいていただける面もありますし、二つを別々で買うよりも運用コストがどうかなど、「S&P500ゴールドプラス」のメリットに注目していただければと思っています。

 どんな商品も、お客さまにはシンプルに見えないといけません。「Tracers」は金融商品で、命の次に大切なお金を預けるものですから、単に外見だけでなく、中身をのぞき込んでもシンプルだと思えるものを目指しています。

 例えば、同じ半分ずつ、といっても、株と債券を1対1で持つと、リスクのほとんどが株になってしまいます。その点、S&P500と金は、リスクの大きさがおよそ1対1で釣り合っている。見た目も、中身をのぞき込んでもシンプルで、しかも経済性があるということですね。

篠田 「S&P500ゴールドプラス」の信託報酬は年率0.1991%(税抜0.181%)。ルールにのっとった運用を行うからここまでコストを抑えられる、と聞けば、個人投資家の皆さんも納得できると思います。一本調子の相場が転換点を迎え、分散投資の必要性が意識され始めたいまだからこそ生まれたファンドだと思いますね。

【スペシャル対談】
日興アセットマネジメント有賀潤一郎 
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楽天証券経済研究所篠田尚子

【前編】S&P500+金は、半分ずつ持つのでは意味がない?
【後編】投資信託の「レバレッジ」はリターンと分散、どっちに使うのが正解?

<プロフィール>

 

日興アセットマネジメント
商品開発部長兼ETFビジネス開発部長

有賀 潤一郎(ありが・じゅんいちろう)
1993年4月に日興證券投資信託委託(株)(現 日興アセットマネジメント(株))入社。株式トレーディング業務を経験した後、1995年以降一貫して投資信託の商品企画および提案に携わる。2015年1月より現職。純資産残高1,600億円に達する人気のレバレッジ型バランスファンド「グローバル3倍3分法ファンド」など、国内リテール向け商品開発を手掛ける。レバレッジ型投資信託やETFの組成にも精通するパッシブ型投資信託のスペシャリスト。

楽天証券経済研究所ファンドアナリスト
篠田 尚子(しのだ・しょうこ)
慶應義塾大学法学部卒業、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。国内銀行にて個人向け資産運用相談業務を経験した後、2006年トムソン・ロイター・ジャパン(現リフィニティブ・ジャパン)入社。傘下の投信評価機関リッパーにて、投資信託業界の分析レポート執筆や評価分析業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。「トウシル」にて「今さら聞けない!一生役立つ投資信託のツボ」連載中。