第4の資産・金を入れることで運用成績が向上

――そもそも、S&P500と金は相性のいい投資対象でしょうか?

篠田 個人投資家の「金」に対する考え方はどうしても「安いところで買って高いところで売り抜けたい」という面が強いと思います。ただ、機関投資家は金を「第4の投資資産」、あるいは「ポートフォリオの緩衝材」「伝統的資産とは異なる収益源」と考えています。

 高いか安いかに関係なく、常に株といっしょに金も持っておきたい。そうすれば資産運用の安定性が高まるという感覚を個人投資家の方に実感してもらう意味でも、「S&P500ゴールドプラス」のように最初から組み合わさっていることのよさは感じますね。

有賀 当ファンドもそうですが、私たちはいわゆるバランスファンドの設計において、「リスクパリティ」という考え方を用いるケースが多いです。各資産のボラティリティ(変動性)はかなり異なるので、株式と債券などを「均等配分」で設計すると株式の変動に大きく揺さぶられることになります。

 そこで、基準価額に対する変動のインパクトを等しく(パリティ)するという目的から資産の配分比率を逆算する方法をリスクパリティといいます。当社のあるリスクパリティ型のバランス型ファンドに資産総額の非常に大きなものがあるのですが、このファンドにおける金の保有比率は時期によりますが15~17%で推移していることが多いです。

 これは、金の値動きが安定していてリスクのインパクトが低いため、逆に資産の組入比率が高くなっているわけです。

 また、株式と金は値動きが異なり、いわゆる「ショック」時には株式の下落を金の上昇で和らげる効果も期待できます。過去20年のシミュレーションでは、S&P500を単独で100%持ったときのリターンは年率で12.1%。

 それに対して、S&P500に100%、金先物に100%を投資する「S&P500ゴールドプラス」のリターンは元手の2倍を投資していることもあって、年率19.8%でした。

 リスクに対するリターンの比率(シャープレシオ)もS&P500単独が0.68に対して「S&P500ゴールドプラス」は0.87と、運用効率がいい。

 さらに、期間中の最大ドローダウン(下落率)はS&P500がマイナス59.8%に対して、「S&P500ゴールドプラス」はマイナス54.6%と、5ポイントほどいい結果になりました。つまり、リターンもリスクに対するリターンの比率も向上し、しかもショック時のダメージも抑えられる。

期間:2002年12月末~2022年7月末●計算前提は前ページと同様です。●リスクは月次リターンの平均、月次リターンの標準偏差を、それぞれ年率換算。●両指数は、当ファンドのベンチマークではありません。●信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成。●上記は、過去の指数データをもとに算出したシミュレーションの結果であり、将来の運用成果などを約束するものではありません。当ファンドの運用においては、売買コストや信託報酬、運用資産の規模、設定解約に伴う資金流出入などによる影響が生じます。そのため、当ファンドの運用成果が、上記シミュレーションと同様のリターンを達成することを約束するものではありません。当ファンドの実際のパフォーマンスなどについては、開示資料などをご覧ください。●純資産の200%の運用を行なうことなどから、当該シミュレーション期間中の値動き(リスク)が大きかった点には十分ご留意ください。

――それでもインデックスファンドでの成功体験を持っていると、二の足を踏む方も多いですよね。

篠田 S&P500が力強い上昇を続けてきたこともあり、「インデックスは、長期的には右肩で上がるもの」という、どこか神格化されたイメージができあがっています。しかし、ファッションでたとえるなら、インデックスは白いTシャツとデニムのような、極めてシンプルでベーシックな服装そのもの。

 実際の相場環境は、天気と同様、汗だくになるほどの暑さや、凍えるような寒さのほか、ゲリラ豪雨に見舞われることもあるので、服装で適宜調整する必要があります。

 

 2022年のロシアによるウクライナ侵攻のように、突発的な地政学的リスクが降ってきたときなどは、自分自身で調整できたほうが対処しやすく、精神的にもラクでしょう。

 ファッションにもさまざまなスタイルがあるように、資産運用でもほんの少しアレンジを加えることで効率が良くなる場合もあります。金のような緩衝材を入れることで運用を安定させるというのは、分散投資においては王道のセオリーですよね。

 また、ここ数年は相場が好調だったので、株式への投資だけで100点をとれたという方も多いはず。しかし、長期投資を実践する上では、「最大瞬間風速」で120点を取るよりも、70点や80点を取りつづけるほうが重要です。服装と同じように、時には着替えるなり、1枚羽織るなり、もっと柔軟に考えてもいい。