インデックスに縛られなくても資産形成に適した低コストファンドはつくれる

――世界的な株安局面を迎えている今、インデックス投資の難しさを感じている投資家さんは多いと思います。まさに分散投資は大きなテーマだと思います。

篠田 2022年に入って、つみたてNISAでも人気の米国S&P500は厳しい状況にあります。しかし、為替ヘッジなしの運用の場合、1ドル140円を超えてきた円安で、よくも悪くも運用成績に「ゲタ」をはかせてもらって、日本の投資家は錯覚を起こしやすい状況といえます。とはいえ、世界の株式市場のトレンドが変わってきたことは感じてらっしゃるはず。

「S&P500がいいのはわかりました。でもインデックスだけにとらわれない投資法はないのか」と、不安を感じている投資家の方もいます。また、インデックスだけではちょっと「つまらなくなってきた」という人もいるかもしれませんね。

有賀 インデックス投資を資産形成のコアの部分に置くのは、王道です。ただ、「インデックス」という言葉だけにとらわれるのはもったいない。

 投資信託の仕組みを考えていくと、本来、投資信託はファンドマネジャーが独自の判断で運用する「アクティブファンド」と、機械的なルールにのっとって運用を行う「パッシブファンド」に分けられます。インデックスファンドは、パッシブファンドの一部です。

 パッシブという枠組みの中で、インデックスに連動するだけではない、「こんなの欲しかった」と思えるような、独創的でユニークなファンドをつくれるのではないか、というのが今回我々が「Tracers(トレイサーズ)」というブランドを立ち上げたきっかけです。

 投資のおもしろさを感じられ、しかも、投資家の方々のニーズに合ったパッシブファンドを世に問うていきたいと思っています。

――S&P500と金(ゴールド)を組み合わせた、ファンドを打ち出されましたが、ここに世のニーズがあったということでしょうか?

有賀 「S&P500ゴールドプラス」というファンドの名前なのですが、SNSなどで「これ、自分たちのアイデアをマネされた」というご意見をちらほら拝見しました(笑)。ある意味、S&P500に金を組み合わせる発想は、誰もが思いつく投資のアイデアかもしれません。

 だとするなら、運用のプロである私たちは、コストを抑え経済性のある組み合わせ方を提示する必要があります。

 例えば、二つを組み合わせるときに金やS&P500のETF(上場投資信託)を使うと、ETFの信託報酬が隠れコストとしてかかってきます。そこで、S&P500は基本的に現物(株式)で、金は先物を活用するという方法を採用しています。

 取材いただく金融メディアの方に「絶妙な価格設定ですね」と言っていただくことがありますが、長期投資ではコストも大切。信託報酬は年率0.1991%(税抜0.181%)と、可能な限りコストを抑えることを心がけています。

 そして、なにより「投信ならでは」のアイデアの提示を行いました。個人の方はS&P500と金に分散しようとすると、例えば100万円をS&P500に50万円、金に50万円とにわけて買うことになります。

 それぞれのリターンの100万円に対する貢献は半分になってしまいます。当ファンドでは、100万円の投資資金で100万円分のS&P500と100万円分の金のエクスポージャー(投資のかたち)を取ります。

 これは金を先物で手当てするからこそ可能になることであり、投資効率も高められます。

 2002年12月から約20年間に及ぶ過去のシミュレーションでは、金との組み合わせによる分散効果に加え、先物取引の活用によるレバレッジ効果や、長期投資に伴う複利効果などの寄与によって、堅調なパフォーマンスとなったことが確認できます。

期間:2002年12月末~2022年7月末●S&P500:S&P500指数(配当込み、円ベース)、金先物:ブルームバーグ金サブ指数(エクセスリターンベース、米ドルベース)、当ファンドのシミュレーション:上記のS&P500と金先物を100%:100%の割合で合成し、月次リバランス。●「50%ずつの場合」:上記のS&P500と金先物を50%:50%の割合で合成し、月次リバランス。●金先物は米ドルで決済される先物取引を活用しますが、買建額に対する為替変動の影響がないことから米ドルベースを掲載しています。なお、実際の金先物取引では、評価損益分や外貨建て証拠金については為替変動の影響を受けます。●両指数は、当ファンドのベンチマークではありません。●信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成。●上記は、過去の指数データをもとに算出したシミュレーションの結果であり、将来の運用成果などを約束するものではありません。当ファンドの運用においては、売買コストや信託報酬、運用資産の規模、設定解約に伴う資金流出入などによる影響が生じます。そのため、当ファンドの運用成果が、上記シミュレーションと同様のリターンを達成することを約束するものではありません。当ファンドの実際のパフォーマンスなどについては、開示資料などをご覧ください。●純資産の200%の運用を行うことなどから、当該シミュレーション期間中の値動き(リスク)が大きかった点には十分ご留意ください。