欧米時間に下落する原油相場は中間選挙後反発?

 今、中国の景気後退が強く意識され、「(欧米に加え)中国景気後退」→「世界景気後退」→「原油価格下落」という連想が浮上しています。このため、「アジア時間」でも原油価格が下落している、というイメージをいだく人は少なくありません。

 しかし、以下の図のとおり、原油価格の下落が目立ち始めた今年6月以降においても、アジア時間で目立った下落は起きていません。むしろアジア時間は、上昇したケースが多いことがわかります。そうなると、浮上するのが「欧米時間に(景気動向以外の)何らかの事情が発生」→「原油価格下落」という連想です。

図:NY原油先物の時間帯別騰落状況 参照日:2022年6月2日から9月13日の74営業日 ※時刻は日本時間

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 確かに「急激な利上げ起因の欧米の景気後退」→「原油価格下落」という連想もありますが、欧米と関わりが深く、世界景気の動向に強く影響し得る中国でも景気後退懸念が生じていることを考えれば、アジア時間でも、下落が起きていておかしくはありません。

 しかし、アジア時間は目立った下落は起きていません。このことから、「景気動向だけ」を、原油価格の下落要因とすることはできないでしょう。

 こうしたことを考慮した上で、「原油価格」「欧米時間」「下落」という三つの点を結んだ線の先に見えてくるのが、「欧米で進む金融政策および選挙対策と原油相場を整合させる力」です。「金融政策(≒利上げ)」と「選挙対策(≒インフレ対策)」を行っているから、原油価格は下がらなければならない、という文脈です。

 これが「アジア時間高・欧米時間安」という、時間帯によって正反対の動きを演じる原油市場における一つの「何らかの事情」であると、筆者は考えています。

 今、こうした事情で下落しているのであれば、11月の米中間選挙が終われば、「選挙対策」と整合性をとるための下落圧力はなくなるでしょう。また、将来的に利上げの温度感が低下すれば、「金融政策」との整合性をとるための下落圧力は低下するでしょう。こうした条件が整い始めれば、原油価格は反発しやすくなるでしょう。

 ほぼ「欧米時間帯限定」で原油価格が下落していること、三つのエネルギー品目(原油、天然ガス、石炭)の中で目立った下落に見舞われているのが原油のみであることを考えれば、足元の原油価格の下落は、世界(中国含む)の景気減速だけでなく、「欧米で進む金融政策や選挙対策と原油相場を整合させるための力が作用していること」も、その一因であると筆者は考えます。