米エネ業界にとって、欧州は今や最大の輸出相手

 米国のエネルギー輸出事情を確認します。以下のグラフのとおり、2021年後半から、EU向けのLNG(液化天然ガス)輸出量が大きく増加しています(グラフ上、オレンジ線)。欧州の天然ガスの高騰をきっかけとした、代替調達需要などが要因とみられます。

 ウクライナ危機勃発以降、EU向けLNG輸出量は、「買わない西側・出さないロシア」がきっかけで起きている需給ひっ迫が追い打ちをかけ、高水準を維持しています。2022年4月は、統計で確認できる2015年1月以降の最高となりました。米国のLNG輸出量におけるEU向けの割合は58%、アジア向けは27%です(2022年7月時点)。

 米国の原油輸出量(グラフ下)は、ウクライナ危機勃発後に、増加傾向が鮮明になっています。LNGと同様、「買わない西側・出さないロシア」がきっかけです。2022年7月は、統計で確認できる2015年1月以降の最高となりました。

図:米国のLNGと原油の輸出量(EU、アジア向け)

出所:U.S. Census Bureauのデータをもとに筆者作成

 また、以下は輸出単価(輸出額÷輸出量)です。

図:米国のLNGと原油の輸出単価(EU、アジア向け)

出所:U.S. Census Bureauのデータをもとに筆者作成

 LNGは欧州の天然ガス価格が高騰し始めた2021年後半から、原油はウクライナ危機勃発後から、単価の上昇が目立ち始めました。EU向けとアジア向けを比べると、最近では、ともにEU向けの方が高い傾向にあります(原油においては、2022年7月時点でEU向けがアジア向けに比べて、1バレルあたりおよそ6ドル高い)。

 米国のエネルギー関連企業にとって、「量の増加」と「単価の上昇」は、大きなビジネスチャンスと言えるでしょう。バフェット氏がオクシデンタル・ペトロリアム社の株を保有しているのも、この点が一因である可能性があります。

 また、数ある関連企業の中でも、比較的単価が高いEU向けの輸出を手掛ける企業は、より大きな「うまみ」を享受していると言えるでしょう。