診断の対象範囲はどこ?世界?中国?

「ドクター・カッパー」は、どこの景気動向を診断しているのでしょうか。最近の報道のいくつかは、足元の銅価格の急落は、世界景気の鈍化を示唆している、つまり、ドクター・カッパーは「世界の景気動向」を診断しているとしています。

「ドクター・カッパー」を論じる上で、「どこ」の議論が欠かせません。このドクターが特定の部位や領域について診断しているのか、全体を俯瞰(ふかん)した診断をしているのか、これは重要なことです。

図:銅の需要国

出所:JOGMECのデータをもとに筆者作成

 上のグラフのとおり、「ドクター・カッパー」の診断範囲は変化しています。1999年は、世界をほぼまんべんなく診断していましたが、2019年には半分が「中国」になっています。「現在の」ドクター・カッパーが、世界全体を診断していないことがうかがえます。

 中国経済が世界経済をけん引している状態であれば、「ドクター・カッパー」が世界全体を診断していることになりますが、近年の中国の経済成長の度合いや、米中間の政治・経済のデカップリング(つながり欠如)が目立っていることなどを考えれば、中国が世界をけん引しているとは言い切れません。

 その意味では、足元の銅価格の急落の主因は「中国の景気鈍化」によるもの、と解釈することもできるでしょう。コロナ感染再拡大、数々の政治不信、各地で噴出する人権問題など、中国独自の材料が主因で、銅価格が下落している可能性があるわけです。