引き続き金(ゴールド)は上昇要因が勝るだろう

「ハイブリッド戦」が横行

 筆者は超長期視点で、金(ゴールド)相場は上昇すると考えています。従来なかった新しい価格上昇要因が発生しつつあり、向こう数十年以内にそれが発動し、相場を底上げし続ける可能性があると考えているためです。

 その要因とは、先述の7つのテーマの7番目で述べた「見えないリスク」の台頭です。以前の「有事(戦争勃発)が与える金(ゴールド)・原油への影響」で述べたとおり、「ハイブリッド戦」が世界のいたるところで横行する可能性があります。

「ハイブリッド戦」は、「軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の手法」とされ、例えば、以下を複合的に用いた手法とされています。(防衛白書より)

  1. 国籍を隠した部隊による作戦
  2. サイバー攻撃による通信・重要インフラへの妨害
  3. インターネットやメディアを通じた偽情報の流布による影響工作

「ハイブリッド戦」という言葉が防衛白書に初めて登場したのは2015年度版でした。ロシアがウクライナに対し、クリミア半島を併合すべく「ハイブリッド戦」を展開しているという件(くだり)でした。

 現在も、ロシアはウクライナや、「非友好国」と位置付けた国に対して「ハイブリッド戦」を行っているとされています。こうした経緯があるため、「ハイブリッド戦」はロシアが行っている戦術という印象がありました。

超長期視点で金(ゴールド)価格は上昇する?

 しかし、今年2月、小野寺元防衛大臣がメディアを通じ、「東アジア、台湾ではすでにハイブリッド戦が行われていると考えるべきだ」と述べました。このことから、「ハイブリッド戦」は、もはやロシアだけの戦術ではなくなっていると、言えるでしょう。

「ハイブリッド戦」には、武力戦に比べて「見えにくい」「感じにくい」性質がありながら、コストを抑えつつ、政治や経済のみならず文化にさえ、長期的に影響を及ぼし得ます。

「見えにくい」「感じにくい」けれども、「勃発」している(各地で同時勃発もあり得る)のが、「ハイブリッド戦」だと言えます。現代型・未来型の戦術と言えるかもしれません。

「ハイブリッド戦」が横行すれば、世界各地で不安・懸念がなくならず(顕在化した時のマイナスのサプライズが大きい)、資金の逃避先需要が絶えず喚起され続けると、考えられます。

 このため以下の通り、金(ゴールド)相場は、「長期的」に底上げされ続ける可能性があると、筆者は考えています。

図:「ハイブリッド戦」起因の「見えにくいリスク」が与える金相場への影響(イメージ)

出所:筆者作成