金(ゴールド)の変動要因における「ドル/円」

ドル建て金(ゴールド)の7つのテーマを確認

 ここまでの話でわかったことは、国際商品の値動きにおいて、ドル建てが「主」で円建てを含む「異通貨同一商品」は「従」であること、為替相場の急変が主従関係を軸とする値動きに「強弱」を加える場合があることです。

 つまり、「円建て」のコモディティ(金(ゴールド)に限らず)価格の推移を見守る際は、必ずと言ってよい程、「ドル/円」の変動も確認しなければならないわけです。

 以下は、筆者が考える、金(ゴールド)の値動きに関わる7つのテーマです。これらのテーマは「主」であるドル建て金の値動きに直接的に関わります。このため、「従」である円建て金については、これらに「ドル/円の変動」を追加します。

図:金(ゴールド)の値動きに関わる7つのテーマ

出所:筆者作成

各テーマにおける具体例

 7つ(円建ての場合は8つ)のテーマは抽象度が高いため、少し具体例を述べます。あくまでも一例ですが、報道などで類似の具体的な材料を見た際は、同じテーマに分類できる可能性があります。

 材料を分類できると、その材料が及ぼす「時間」の目安が見えてきます。目先の価格変動を誘発する材料なのか、今は影響がなくても長期視点で影響を及ぼし得る材料なのか、という目安です。

図:金(ゴールド)の材料における「抽象」と「具体」

出所:筆者作成

 しばしば気になるのが、「中央銀行の金(ゴールド)保有高が増加した」という材料です。これは短中期的な材料でしょうか、中長期的な材料でしょうか。中長期であると、筆者は考えます。

 おおむね四半期に1度の頻度で公表される統計に含まれる当該情報が、短期的な価格の変動要因になったのを、あまり見たことがありません。(ゼロではないかもしれない。しかし、少なくとも頻繁ではない)

 統計の配信頻度が高くない(時間軸が長い)こと、そして、そもそも中央銀行自体、短期で大量に売り買いを繰り返す取引参加者ではないことを考えれば、この手の材料は「中長期」に分類されるでしょう。

 このように「大きな資金を動かす誰かが買った→価格急騰」という、単純な図式にならないケースがあることに留意が必要であり、こうした事象を理解することを助けるのもまた、7つのテーマの分類なのです。