今回も買い需要が出そうな理由

 では、今回の回復局面ではどうだろうか。米CPI(消費者物価指数)は7.5%と2020年当時、伝説の投資家と呼ばれたポール・チューダー氏らが懸念していた通りのインフレが発生。これに対しFRB(米連邦準備制度理事会)も流動性供給と利上げを同時に行う荒療治に出ているが、年1~2%程度の利上げでは焼け石に水で、インフレリスクは当時より高まっている。

 さらに、今回の経済制裁は2つの大きな禍根というか影響を残すと考える。外貨準備の米ドル離れと国際決済のSWIFT(国際銀行間通信協会)離れだ。そして、この2つはBTCなど暗号資産の需要にプラスに働くと考える。

外貨準備のドル離れ

 まず、前者だが、今回の制裁の中で最もロシアにダメージを与えたのは、各国中銀のロシア中銀との取引停止だったと考える。その結果、ロシア中銀は外貨準備の半分以上にアクセスできず、為替介入によるルーブル防衛が困難となった。

 ただ、このやり方は、世界中の指導者に戦慄(せんりつ)を与えた。米ドルで外貨を準備していても、米国と対立したら使えないことが明らかになったからだ。もちろん、日本など米国の同盟国はそんな心配はない。しかし中国や中東、さらに中南米の独裁者に与えたメッセージは大きい。

 外貨準備における米ドルの割合を減らす国が出てくることが予想されるし、その文脈でどこの国にも属さないBTCを加える国も増えてくると予想する。

 エルサルバドルは外貨準備どころか法定通貨にBTCを加えている。同国はすでに自国通貨を持たず、ドルを流通させるいわゆる「ドル化」をしているのだが、安定した通貨を得られる一方で、自国なりの金融政策ができず、今回のように米国の金融政策の失敗の影響をもろに被ることになる。

 そこでブケレ大統領はドル1本足打法からの脱却を図ったわけだが、エルサルバドルの試みに興味を持つ国はいくつか指摘されている。法定通貨とまでは行かなくとも、どの大国からも影響を受けないという外貨準備としてのBTCを評価・採用する国が出てくる可能性がある。

国際決済のSWIFT離れ

 Windows誕生のはるか昔から国際送金のメッセージツールとして君臨するSWIFTは、何度も更新の必要性が唱えられ、暗号資産を利用した送金方法には*金融包摂(ほうせつ)のツールとしてIMF(国際通貨基金)などからも期待を寄せられている。

**米SEC(証券取引委員会)による提訴で白紙に戻ったが、一時、米国―メキシコ間の移民送金の1割を、暗号資産XRP(リップル社が発行した仮想通貨)を利用したシステムが担ったこともあった。前出のエルサルバドルではBTCのライトニングネットワークという技術が決済に利用されている。

*金融包摂:経済活動に必要な金融サービスをすべての人々が利用できるようにする取り組み
**米SECによる提訴:2020年12月、SECが、XRPを有価証券とみなし、証券法の投資家保護違反で訴えるとし、リップル側は、XRPは通貨だとして反論した事件。

 またロシアが独自の決済システムや中国の決済システムを利用するとの見方も浮上している。SWIFTからのロシア排除は、世界の決済システム更新競争の扉を開いてしまったかもしれない。

 こうして、数年の間に世界の送金システムの脱SWIFT化に拍車がかかるだろうし、その中でブロックチェーン技術を用いたシステムも相応のプレゼンスを見せる可能性があるだろう。

2022年 時事イベントと仮想通貨の出来事

1月20日 ロシア中銀が暗号資産の*マイニングと流通の禁止を提案
1月26日 プーチン大統領、中銀の暗号資産禁止に同意せず
1月31日   春節の連休入り(大晦日)。例年BTCが強い時期
2月4日 北京五輪開幕。当面、軍事衝突が控えられるという見方でBTC上昇
2月12日 **BlockFi、SECと1億ドルで和解。米国内でのレンディングサービス困難に
2月17日 米大統領、ロシアが数日中にウクライナ侵攻    
2月20日 北京五輪閉幕
2月25日 プーチン大統領、軍事攻撃を命令
2月27日  米欧、ロシアをSWIFTから排除
2月28日 米、ロシア中銀の資産を凍結。ルーブル安からBTCに逃避フロー
3月9日 デジタル資産に関する米大統領令を好感
3月14日 欧州議会でマイニング禁止条項否決

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見れる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。 

**暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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