BTCが逃避資産となる仕組み

 しかし、デジタルゴールドと呼ばれることがあるように、BTCは逃避資産としての性格も併せ持つ。それは、法定通貨の価値が揺らいだ時のみ発動する。

 普段、多くの人は、現金が最もリスクが低いと考えて生活している。しかしよく考えてみれば、今使っているお金はただの紙切れだ。国家による強制と徴税権が背景にあると説明する人もいるが、今の政府に増税して国債を償還する能力があるとは思えない。

 そもそも日本では宋が滅亡してからもずっと宋銭を使っていた歴史があるし、1970年代までマリアテレジア銀貨がアフリカで使用されていた例もあり、お金に国家の裏付けは必要ない。

 しかし、この紙切れが1万円の価値を持っていると信じているから受け取るし、さらに1万円をもらうとうれしくなる。しかし、法定通貨の減価がある程度進むと、人々は夢から覚めてそれが単なる紙切れであったことに気づいてしまうことがある。

 そうした時にBTCは逃避先としての性格を表す。なぜならば法定通貨を発行する国家の関与しない新しいお金として設計・誕生したからだ。

法定通貨の逃避先となる仕組み

 こうした逃避先としてのBTCの人気を『21世紀の貨幣論』を著したフェリックス・マーティン氏は社会契約論のジョン・ロックの貨幣観の回帰だと指摘した。ロックの貨幣観とは「貨幣システムは、厳密かつシンプルなルールに従うべきだ」というもので通貨の発行量は中央銀行金庫にある金(ゴールド)の量に依存するべしとするものだ。

 これに対し、現在の政府は無制限に貨幣を発行、その価値を減価させていく。そうしたときにプログラムで発行量が定められているBTCは法定通貨のアンチテーゼとして輝きを増すわけだ。

 そんな難しい話をせずとも、ルーブルの価値が急落しているのに海外送金や外貨購入が禁じられたら、BTCに資産を逃避させたくなることは肌感覚として理解できるだろう。