3つ目の根拠「OPEC」。過剰な増産せず

 以下のグラフは、3つ目の根拠である「OPEC」の動向です。

 現在、OPEC加盟国のうち10カ国と非加盟国10カ国の合計20カ国は、生産量の上限を決め、原油の生産を行っています。以下のとおり、上限を上回らない「計画的な増産」を行っています。

図:OPECプラス(減産実施20カ国)の原油生産量と生産量上限の目安(百万バレル/日量)

出所:ブルームバーグのデータおよびOPECの資料をもとに筆者作成

 OPECには現在13カ国が加盟していますが、イラン、リビア、ベネズエラの3カ国は生産量に上限を決めた生産は行っていません。(減産免除)

 しばしば、生産量の上限(required production)が「生産目標」と表現されることがあります。この量は、「生産しなければならない量」ではなく、「これを超えて生産してはならない量」と、とらえるべきだと筆者は考えています。

 生産するよう要求されている(required)量ではなく、これを上限に生産するよう要求されている(required)量、ということです。

 現在、OPECプラスは「減産」期間中にあり、生産量を減らすことを念頭に置いています。減産に参加する20カ国、いずれにも減産の基準となる「参照量(reference production)おおむね2017年10月の生産量」が設定され、その量から毎月どれだけ生産量を減らすかを協議しています。

 生産目標(生産しなければならない量)なのであれば、OPECプラスが減産を実施していることと矛盾します。毎月彼らが協議しているのは、生産しなければならない量ではなく、上限とする量です。

 以下は、各国ごとの生産量の上限と2022年1月の原油生産量の差分です。上限を上回った国(約束を破って増産をしてしまった国)は、イラクやカザフスタンなどです。(さしずめ「抜け駆け増産」、「ヤミ増産」でしょうか)

 上限を下回った国は、ナイジェリアやアンゴラ、クウェート、ロシアやサウジアラビアの名前もあります。こうした国は「もう少し生産できたのに生産しなかった国」です。

図:OPECプラス(減産実施20カ国)の原油生産量と生産量上限の差分(百万バレル/日量)

出所:ブルームバーグのデータおよびOPECの資料をもとに筆者作成

「もう少し生産できたのに生産しなかった国」は、2つのパターンに分かれます。1つ目は、「生産したくてもできなかった国」、2つ目は、「自らの意思であえて少なく生産した国」、です。

 石油開発に対する「投資不足」が指摘されている国は、前者の「生産したくてもできなかった国」です。報じられているとおり、ナイジェリアやアンゴラなどが当てはまると、みられます。

 一方、「自らの意思であえて少なく生産した国」は、ロシアやサウジなどが当てはまると考えられます。昨年夏以降、OPECは何度か主要な消費国から増産を要請されましたが、計画以上の増産をしませんでした。

「できるのに増産しない」。ここには「意思(思惑)」があります。予定を超えた過剰な増産をしないのは、原油相場を下落させないため(経済的なダメージ回避するため)、安易に消費国になびいたというイメージを醸成しないため(資源国としての発言力を維持するため)、などの思惑があると考えられます。

 また、サウジが他国の分をカバーして生産量を調整しないのは、現在の減産には、全体として減産を順守するのではなく、個別の国ごとに、減産を順守しなければならないルール(個別に埋め合わせを行うルール)があるためです。

「投資不足」と「意思(思惑)」。文脈は違えども、OPECプラスは全体として、上限に届かない生産を続けています。この点もまた、足元の原油相場の上昇要因と言え、同時に「原油100ドル説」を支持していると言えます。