中央銀行の金保有に関する留意点

「割合」とは何でしょうか?「2つの変数において、一方がもう一方に対し、どの程度の量・大きさなのかを示す値」と言えます。割合は2つの変数によって求められます。外貨準備高に占める金(ゴールド)の割合であれば、外貨準備高の合計額と、それに含まれる金の額です。

 外貨準備高に占める金(ゴールド)の割合が上昇したからといって、必ずしも、金の額が増えているとは限りません。外貨準備高の合計額が減少したケースがあるためです。また、金の額はその時の金相場で計算されているため、金相場が上昇すれば、同割合は上昇しやすくなります。

 中央銀行やそれに相当する機関が、足元や今後を混乱期ととらえ、対策を強力に推し進めているかどうかを推測するためには、金の保有量(金額ではない)が増加し、かつ、金(ゴールド)以外の外貨準備高が増加している国がどれだけあり、それらがどういった共通点を持っているのかを、調べる必要があります。

 ちなみに、記事中で大きく取り上げられたカザフスタンですが、2010年第3四半期と2021年第3四半期を比べると、金の保有量こそ増加したものの(67トン→397トン)、金以外の外貨準備高は減少しました(249億ドル→134億ドル)。外貨準備高に占める金の割合が上昇する2つの条件が整っていました。

図:主要国の中央銀行による金(ゴールド)保有量などの変化(2010年9月と2021年9月の比較)

出所:WGCのデータより筆者作成

「経済規模が大きい新興国」に注目

 WGCのデータによれば、当該期間において、金の保有量が90トン以上増加した国は12カ国ありましたが、金の保有量と金以外の外貨準備高の両方が増加したのは、ロシア、中国、トルコ、インド、タイ、ポーランド、メキシコ、ブラジル、イラク、韓国の10カ国でした(金保有量の増加幅が大きい順)。

 それ以外の2カ国、カザフスタンとハンガリーは、金以外の外貨準備高が減少しました。

 記事に示されていないインド、メキシコ、ブラジル、イラク、韓国が、金(ゴールド)の保有量と、金以外の外貨準備高の両方を、増加させていました。足元や今後を混乱期ととらえ、対策を強力に推し進めているのは、カザフスタンやハンガリーなどよりも、「経済規模が大きい新興国」だったと言えるでしょう。