金(ゴールド)で資産保全を図る中央銀行

 先日、世界の中央銀行の金(ゴールド)保有量が、記録的な水準まで積み上がっていると、報じられました。記事の冒頭には、「無国籍通貨(いかなる国の信用の裏付けを必要としない通貨)」の異名を持つ金は、世界の金融市場が混乱した時に注目される旨が、記されていました。

 世界的な金(ゴールド)の調査機関であるWGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)が公表する統計には、合わせて120を超える、国・地域の中央銀行や、それに相当する機関が保有する外貨準備高の額、それに含まれる金の額と量、および金以外の外貨準備高の額が記載されています。

 中央銀行は、「物価と雇用の安定」「銀行の銀行」という役割を安定的に果たし続けるため、日頃から、さまざまな環境の変化に対応できるようにしておく必要があります。外貨準備高を保有しているのはこのためです。

 その中央銀行が金(ゴールド)の保有高を記録的な水準まで増加させていることは、それだけ、足元の世界の金融市場が混乱しており、かつ今後も混乱が続くとの見方が優勢であるためでしょう。大手経済紙の一面は、こうした中央銀行の思惑を解説したわけです。

 記事は、外貨準備高に占める金(ゴールド)の割合が目立って上昇した国を取り上げていました。最も大きく取り上げられたのが、カザフスタンです。同国の2010年第3四半期の割合は10.2%でしたが、2021年第3四半期は62.4%となりました。トルコやロシアが、それに続きました。

 信用力の比較的低い新興国の中央銀行が、自国が新型コロナの感染拡大によって混乱していることや、米国の長期金利が大規模な金融緩和により、長期的にみて低水準に達したことなどを背景に、金(ゴールド)で資産保全を図るようになったことは、確かでしょう。