習近平が語る共同富裕は企業家・投資家にとって歓迎できるものか?

 共同富裕を長期的な視野と時間軸で着実に推進していく上で、習総書記は何が重要だと考えているのか。私から見て、習総書記の肉声から注目に値するポイントを抽出してみました。

勝ち組の功績を容認しつつ、富の再分配へ向けた貢献を要求

 一部の人間が先に富むのを容認するのと同時に、先に富んだ者が後に富む者を引き連れ、助けることを強調しなければならない。勤勉に労働し、合法的に経営し、起業に情熱を注ぐ人間が富んでいくことを重点的に奨励する

独占業界の改革と協調的発展の推進

 業界間の発展の協調性を強化する。独占的業界の改革を加速させ、金融、不動産、実体経済の協調的発展を推進していく

資本拡張と独占を警戒、知財と起業家精神は奨励

 長年の探索を経て、我々は貧困問題の解決には包括的な方法を持つに至ったが、いかにして富を創造するかに関してはまだまだ経験を積んでいかなければならない。知的財産権を守り、合法的に富を創造していかなければならない。資本の無秩序な拡張に断固として反対し、敏感な領域への市場参加にネガティブリストを設け、反独占をめぐる管理監督を強化する。と同時に、企業家の積極性は重んじ、生かさなければならない。各種資本の規範的、健康的な発展を促していくのだ

 私から見て、貧困解決→富の創造の部分の記述は非常に新鮮で、習総書記の口からこの言葉が出てきたことに驚きました。

「資本の無秩序な拡張」は中国恒大集団やアントフィナンシャルDiDiといった企業が当局ににらまれた原因と言えます。反独占はアリババや美団を含めたイノベーション企業を標的にしています。“規制ラッシュ”は決して一段落したわけではないと言えるでしょう。まだまだ注意が必要です。党指導部は人民に寄り添っているとアピールしたいわけですから、消費者のお財布事情や感受性に直接影響を与える商品やサービスを提供する業界や企業が規制の対象になりやすく、その意味で、不動産やIT系は典型例と言えます。

 一方、知財の保護や企業家の積極性を重んじるといった言葉からは、一連の規制強化が、経済や企業の成長の足かせとならないように、市場をなだめようという当局の意思を感じさせます。当局としても、自らの政策が経済成長を停滞させる引き金となるのは望んでいないはずです。企業への監視や規制を強めつつ、企業家の積極性を重んじ、促す政策を打っていけるかどうかが鍵を握るでしょう。