資源高によるインフレ懸念高まる

 10月4日、OPEC(石油輸出国機構)プラスの閣僚級会議は、従来のペースを維持し、11月も協調減産を日量40万バレル縮小することで合意しました。

 米国を襲ったハリケーンの影響で原油の需給逼迫(ひっぱく)感が強まっていたため増産期待が高まっていましたが、増産見送りを受けて、4日のNY原油先物相場は78ドル台と7年ぶりの高値を付けました。そして原油上昇からインフレ懸念が高まり、NY株は下落しました。

 原油上昇の他にも、冬場を迎える前に、すでに高騰している欧州の天然ガス、中国の電力供給制限による操業停止などによって原材料や部品・製品などの供給不足が続くことなどインフレ長期化の懸念材料がくすぶっています。これらの動向は今後の要注目材料です。

 9月29日、ECB(欧州中央銀行)主催の金融シンポジウムで日米欧英の中央銀行総裁は、景気回復の妨げになっているサプライチェーン(供給網)の目詰まりなどへの警戒を示しました。

 FRBパウエル議長は「供給網の問題が改善せずに、少し悪化しているのはいらだたしい」と指摘し、供給制約は来年まで続きそうで「考えていたよりもインフレを長引かせる」可能性があると述べました。

 今のところ、景気回復のテンポを鈍らせ、インフレに拍車をかける供給制約は一時的なものというのが各国中央銀行の見方ですが、思惑通りにことが進むのか、各国中銀が神経をとがらせています。

 もし、インフレが長期化すれば、長期金利は高止まりする可能性もあるため、ドル/円のレンジ水準が切り上がることもシナリオとして想定されますが、インフレ長期化が景気や株の足かせになり、中国景気後退も加わり、円安は限定的とのシナリオにも注視しておく必要がありそうです。

 当面は、「米国債務上限問題」や「恒大集団の債務問題」と、「FRBのテーパリング開始時期」や「インフレ長期化懸念」との綱引き相場が続きそうですが、上記の2つのシナリオのどちらに引っ張られるのか、注目です。