なぜ、大学入試改革が行われているのか?

 世の中が「複雑化」したことを示す例をもう1つ挙げます。「大学入試改革」です。日本における「大学入試改革」をめぐる動きは、2012年ごろから活発化しはじめました。

 今般の「大学入試改革」は、「学力の3要素」を多面的・総合的に評価することを旨としています。従来のいわゆる「詰込み型」は、知識の習得には有効であるものの、現代社会で求められる人物を育てることを念頭におけば、不十分との認識です。

 文部科学省の資料には、「詰込み型」から脱却することを決め、大学入試改革を進めるに至った背景について、以下のように書かれています。

図:日本における「大学入試改革」をめぐる動き

出所:文部科学省の資料より筆者作成

「国際化、情報化の急速な進展、社会構造も急速に、かつ大きく変革」「新たな価値を創造していく力を育てることが必要」などと、力強い文言が盛り込まれていることから、文部科学省が「世の中が変わった」ことを強く認識していることが伺えます。

 日本において、こうした議論が活発になったのは先述のとおり、2012年ごろからです。

 また、高校が大学に提出する調査書を電子化することの研究では、「多様性」への評価を拡充することについて、言及されています。「多様性」は大学入試改革に関わらず、近年、頻繁に耳にするようになりました。「ダイバーシティ」です。

「多様性」を評価項目として重視する背景には、世の中で多様化が進行したこと、多様化が今後さらに進行する可能性があることが、挙げられます。物事を点で見る、見えているものだけを見る、見たいもの信じたいもの聞きたいもの感じたいものだけを取り入れる、などの姿勢は、多様性を重視する考え方に反します。

「多様性」を意識する時のコツは、頭の中をニュートラル(中立)にすることだと、筆者は考えています。さまざまなことが身の回りで起きていますが、それらを認識する上で、偏らない、まんべんなく見る、俯瞰する、などの姿勢が、現代人に求められているのだと思います。

 日本のみならず、「多様性」を追求する、こうした改革が世界各地で進んでいることは、世の中が「複雑化」していることの証と言えるでしょう。