投資家を含め市場関係者は、投資脳を一度、リセットしなければならない

 例えば、この20年間で起きた大きな変化を挙げると、以下のようになるでしょう。市場はこれらを飲み込みながら、推移してきたわけです。

図:この20年間で起きた大きな変化(例)

出所:筆者作成

 この20年間に起きた変化を考えた時、筆者の頭にある問いが浮かびました。こんなにも多くのことが起き、こんなにも世の中が変化する中で、「定石」「定説」「常識」が変わらないことなど、あるのだろうか? 20年前の常識を今、そのまま用いることが有効か? という問いです。

 価格の上昇は、「景気がよい」「需要が旺盛である」ことを示す。このことは、経済学的には「常識」であるわけですが、この20年の間、景気が悪くても、需要が落ち込んでも、価格が上昇する場面を、筆者は何度も見てきました。

 価格上昇が、必ずしも人類が(特に市場関係者が)期待する、景気の良さや需要の旺盛さを示さない事例が増えたのは、この20年間に、上記のような多数の大規模な変化が絶え間なく起き、市場を含む世の中全体を取り巻く環境が変化したからだと、筆者はみています。

 心の奥底で「よりどころ」「すがるもの」を欲する人という生き物が持つ、「期待の前借り」の特性が、特に近年、市場に反映していると思えてなりません。

 価格が足元の実態と激しく乖離(かいり)している今こそ、20年間の変化を直視した上で、「投資脳」を一度再構築し、市場分析にあたることが、必要だと考えます。

 こうした取り組みは、多少の煩雑さを伴うものですが、20年間の激動と言える変化を経て市場が「複雑化」してきたことを考えれば、市場関係者や投資家も、そうした市場の変化に合わせて、考え方を変えていかなければならないでしょう。