米国株が強い理由:製造業のウエイトが低い

 日経平均の下落が続く中、米国株は好調です。7月最終週は反落しましたが、7月26日には主要指数(NYダウ、ナスダック総合指数、S&P500)そろって史上最高値を更新していました。

ナスダック総合指数・S&P500・日経平均の比較:2019年末~2021年7月末

出所:QUICKより作成、2019年末の値を100として指数化

 米景気は好調だが、日本の景気回復力は鈍いままです。日米の景況感の差が、日米の株価パフォーマンスの差に出ています。

 さらに、米国および世界の景気が来年には減速する懸念が出ていることが、グローバルな投資家が、日本株を売って米国株に資金を集中する理由となっています。世界景気の減速が2つの効果をもたらすからです。

【1】世界景気が減速すると、製造業に大きなダメージが及ぶ
 日本や中国は製造業が強く、株価指数に占める製造業のウエイトが大きくなっています。そのため、世界景気が減速して製造業の景況がピークアウトする懸念から、日本および中国の株価指数は冴えない動きとなっています。

 一方、米国は早くから製造業が空洞化していて、株価指数に占める製造業の比率は小さくなっています。代わりに、IT産業やヘルスケア、金融業の比率が高くなっています。そのため、世界景気が減速して製造業が悪化するマイナス影響を、米国株は受けにくくなっています。

【2】世界景気が減速すれば、世界的な金融緩和の長期化が期待される
 今年の3月には、米景気が好調過ぎて、米長期金利は1.7%を超えるところまで上昇しました。その頃、米国の金融政策を決めるFRB(連邦準備制度理事会)は早々にテーパリング(金融緩和縮小)に追い込まれるとの見方が広がりました。テーパリングへの不安が米国株の上値を押さえました。

 ところが、最近は米国および世界景気は、来年にかけて減速するとの見方が広がってきました。それを受けて、米長期金利は1.2%台まで低下し、早期のテーパリング不安は低下。それが、米国株が買われて最高値をつける要因となりました。

米長期(10年)金利推移:2020年1月2日~2021年7月30日

出所:QUICKより作成