リスク1:新型コロナのデルタ変異株の感染力

 2021年1-3月期実質GDPは前期比でマイナス、今後公表予定の2021年4-6月期実質GDPも、東京都などに「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が発令されていたので、さえない数字になりそうです。

 さらに、東京都の新型コロナウイルスの新規感染者数は連日3,000人を超え、29日には初めて全国で1万人を上回る新規感染者が確認されました。

 ワクチン接種が進んでいる高齢者の感染や重症化が抑制されている一方、現役世代の感染者が急増し、重症者も増えています。また、酸素マスクなどによる酸素の供給が必要な「中等症Ⅱ」の患者も若年化傾向が見られるなど、現在の第5波は、これまでとは様子が違っています。

 デルタ変異株の感染力を考えると、今後、地方への拡散・感染爆発もあり得るので、現役世代へのワクチン接種が進捗(しんちょく)するのを待ちつつ、活動を制限せざるを得なくなるという我慢の夏になります。

 全国の感染者が初の1万人超えとなった29日に、日本医師会など9団体が政府に対して、全国を対象にした「緊急事態宣言」の発令の検討に入るべきだという緊急声明を発表したことにも注目です。

リスク2:雇用者激減の宿泊業、飲食サービス業

 今、宿泊業、飲食サービス業、観光業にとっては夏休みの書きいれどきですが、かなり厳しい局面を迎えることになります。

 厚生労働省『令和3年版 労働経済の分析』(労働経済白書、2021年7月16日閣議配布)は、「新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響」がテーマです。

 コロナ禍の雇用への影響は業種別にバラつきがありますが、何と言っても、最大の被害は宿泊業、飲食サービス業です。宿泊業、飲食サービス業の雇用者は、2019年平均と2020年平均で364万人から339万人と▲25万人も減少しました。2021年になってもこの傾向は続いています。

 厚生労働省「労働力調査(基本集計)」で5月までのデータを見ると、宿泊業、飲食サービス業の雇用者は2021年1~5月平均では312万人。2020年同期平均と比較して▲27万人も減少しています。

 農業、林業を除く産業全体では、2019年平均5,943万人、2020年平均5,914万人(前年比▲29万人)、2021年1~5月平均5,905万人(同▲9万人)と比べると、宿泊業、飲食サービス業の雇用者の減少がいかに大きいかが分かります。

『労働経済の分析』では、雇用調整助成金などによる失業の抑制効果を推計しています。それによると、2020年4~10月期の失業率を2.6ポイント程度、抑制したとしています。内閣府による推計では、2020年第2~4四半期の各期の失業率を2~3ポイント程度抑制したとしています。

 雇用調整助成金などによる失業の抑制効果はかなり強力なもので、成長分野への労働移動を遅らせる弊害が指摘されるほどですが、少なくとも、宿泊業、飲食サービス業については、他の業種に与えたほどの効果はなく、それだけ、業種によるコロナ禍のダメージが非対称ということが分かります。

 ダメージの大きい業種ほど、人材は流出するし、企業も負債を抱え、キャッシュフローが厳しくなります。こうした課題は目先の売り上げが回復しても、すぐには解決しないので、先々にも尾を引きそうです。