まだ残る不安:米中対立の激化

 私は、テーパリングを懸念して株を売り込むのは、時期尚早と考えています。コロナからの回復を買う上昇相場はまだ続くと考えています。

 ただし、そうした予想を壊しかねないリスクがないわけではありません。それは、米中対立激化、東アジアの地政学リスクです。

 米中対立は、これから50年続く「米中冷戦」に発展すると私は考えています。米中対立は根が深すぎて、抜本的な解決策がありません。貿易戦争から始まり、ハイテク覇権争い、アジア・太平洋圏での覇権争い、台湾海峡の地政学リスク、さらにウイグルや香港の人権問題にも発展しています。

 政治体制をめぐる対立も解決策がありません。米国は、中国の「国家資本主義」を批判しています。国の補助を得た中国企業が半導体・液晶・スマートフォン・車載電池・5Gなど世界の有望市場で次々とトップシェアを取っていく戦略です。中国は、成長の根幹にかかわる「国家資本主義」を米国に批判されたからといって、やめるつもりはありません。

 米国との貿易戦争は、泥沼に陥る可能性があります。中国企業は、歴史的な流れからすると、そろそろ自国からの輸出を抑え、米国での現地生産をどんどん立ち上げていかなければならない段階に入っています。ところが、米国との関係をここまで悪化させてしまうと、中国企業が米国で現地生産を立ち上げるのは困難になりつつあります。

 日本は、1980年代に米国と苛烈な貿易戦争を体験しました。その後、日本企業はどんどん米国での現地生産を立ち上げました。その結果、日米の貿易戦争は、影を潜めました。中国企業は、日本と同じように米国での現地生産を増やそうとしても、政治的な対立でできなくなっています。

▼著者おすすめのバックナンバー
3分でわかる!今日の投資戦略:2021年6月22日 日経平均急落:ここは「買い場」と判断。日銀がETF701億円買い
軋む中国:2021年6月17日 なぜ中国はG7批判を「社交辞令」反発でとどめたのか?