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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]日経平均急反発!NY発テーパリング・ショック終了?まだ残る不安
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日経平均急反発、前日の下げの大部分を取り返す

 6月22日の日経平均株価は、873円高の2万8,884円でした。米国のテーパリング・ショック【注】が波及して、953円安と急落した21日の下げの大部分を1日で取り戻しました。

【注】テーパリング(金融緩和縮小)・ショック
 6月16日、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)の結果が発表されました。株式市場にショックを与えたのは、FRB(連邦準備制度理事会)が2023年に利上げ2回の予想を発表したこと。さらに、パウエル議長がテーパリングの議論を始めると発表したこと。2022年にもテーパリングが始まるとの思惑が広がり、先週はNYダウが急落しました。

日経平均株価日足:2021年1月4日~2021年6月22日

出所:楽天証券マーケットスピードより作成

 上記の日足チャートを見ると、日経平均は6月中旬まで2万9,000円を中心とした「三角もち合い」を形成しつつあったことがわかります。強弱材料がきっこうして、上へも下へも大きくは動きにくくなっていました。

【強材料】日本の景気・企業業績回復期待
 緊急事態宣言が3度まで延長されて日本の景気回復が遅れていましたが、米国・中国景気好調の恩恵で、いずれ日本の景気回復も鮮明になるとの期待が続いています。

【弱材料】米景気過熱でテーパリング(金融緩和の縮小)が始まる懸念
 米景気好調で上がってきたNYダウですが、インフレ懸念・テーパリング懸念が強まってから上値が重くなっています。

 日経平均は、もち合いの収束点が近づいたところで、6月16日にいったん上放れを試しました(2万9,480円まで上昇)が打ち返されました。次に6月21日に下放れを試しました(日中安値で2万7,795円まで下落)が急反発し、また2万9,000円の近くに戻ってきました。

 日経平均は今しばらく、2万9,000円を中心としたボックス圏での推移が続く可能性があります。日本の景気・企業業績に回復期待が強まりつつあることから下値は堅くなりつつあるが、米テーパリング懸念は払しょくできず上値は重い状況が今しばらく続きそうです。

NYダウと日経平均の日次推移:2020年10月1日~2021年6月22日(NYダウは21日まで)

出所:QUICKより作成

 私は、日本株は「買い場」と判断しています。テーパリングに対する懸念は先走り過ぎと考えています。まだ、米国の緩和的な状況は長く続くと考えられるからです。

 テーパリングが始まってもなお緩和的状況は続きます。引き締め(利上げまたは量的引き締め)が始まるまで緩和的状況が根本的に変わるわけではありません。テーパリングという言葉に強く反応して、しばらく日米とも株式市場の上値が重くなりそうですが、そこは買い場と判断します。

まだ残る不安:米中対立の激化

 私は、テーパリングを懸念して株を売り込むのは、時期尚早と考えています。コロナからの回復を買う上昇相場はまだ続くと考えています。

 ただし、そうした予想を壊しかねないリスクがないわけではありません。それは、米中対立激化、東アジアの地政学リスクです。

 米中対立は、これから50年続く「米中冷戦」に発展すると私は考えています。米中対立は根が深すぎて、抜本的な解決策がありません。貿易戦争から始まり、ハイテク覇権争い、アジア・太平洋圏での覇権争い、台湾海峡の地政学リスク、さらにウイグルや香港の人権問題にも発展しています。

 政治体制をめぐる対立も解決策がありません。米国は、中国の「国家資本主義」を批判しています。国の補助を得た中国企業が半導体・液晶・スマートフォン・車載電池・5Gなど世界の有望市場で次々とトップシェアを取っていく戦略です。中国は、成長の根幹にかかわる「国家資本主義」を米国に批判されたからといって、やめるつもりはありません。

 米国との貿易戦争は、泥沼に陥る可能性があります。中国企業は、歴史的な流れからすると、そろそろ自国からの輸出を抑え、米国での現地生産をどんどん立ち上げていかなければならない段階に入っています。ところが、米国との関係をここまで悪化させてしまうと、中国企業が米国で現地生産を立ち上げるのは困難になりつつあります。

 日本は、1980年代に米国と苛烈な貿易戦争を体験しました。その後、日本企業はどんどん米国での現地生産を立ち上げました。その結果、日米の貿易戦争は、影を潜めました。中国企業は、日本と同じように米国での現地生産を増やそうとしても、政治的な対立でできなくなっています。

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