全体的に、コモディティ相場が「ゲタを履いている」点に注意

 需要と供給、両面から原油市場の状況を確認しました。ここからは、原油市場を含んだ、市場全体の動向について書きます。以下の図は、主要株価指数や通貨、金利などの他の市場を含んだ「全体」の動向と、コモディティ市場のカテゴリごとの「個別」の動向を示したものです。

図:足元の、「全体」の中のコモディティ市場(イメージ)

出所:筆者作成

 先述の石油の需要面における「期待先行」「願望先行」「美点凝視」に似ていますが、コロナ禍にあり、景気回復を示唆するニュースが受け入れられやすい環境にあるため、データが示す実態ではなく、「全体的な将来の良いところ」がきっかけで、景気動向に敏感な投資対象(主要株価指数や原油や銅など)の価格が上昇するケースが散見されます。

 上図のとおり、「全体的な将来の良いところ」とは、中国の景気回復やワクチンの流通、各種需要の回復(一部では需給ひっ迫との報道も)、そして景気回復・株高の原動力とも言える主要国の金融緩和などが、その「全体的な将来の良いところ」を拡大・増幅させていると考えられます。

 拡大・増幅した「全体的な将来の良いところ」は、コモディティ(商品)価格の底上げに、貢献していると考えられます。景気回復は、幅広い分野の需要拡大期待を増幅させるためです。原油も同様に、底上げされた、いわゆる「ゲタを履いた」状態にあると考えられます。

 長期的には「脱炭素」ブームで原油の消費が減少する(原油価格は環境面から下落すべき)という見方もありますが、根強い「原油価格上昇=景気拡大」のイメージの追い風もあり、今のところは、原油相場の上昇は「良性」とみられているようです。