米国市場ではナスダックと半導体株に持ち直しの動き

 ビットコイン相場は波乱に直面しましたが、米国株には見直し買いもみられます。米国債は、5月12日に発表されたCPI(消費者物価指数)の伸びが急だった前後からインフレ加速と金融政策を巡る思惑に揺れ、期待(予想)インフレ率と長期金利に上昇懸念が高まりました。

 ただ、その後の債券市場は落ち着きを取り戻し、経済がパンデミックからの回復を続けるなか、FRB高官が都度指摘するように「目先の物価上昇は需要回復と供給制約を受けた一時的な事象」で、「金融当局はテーパリング(量的緩和縮小)に前のめりにならない」との見方が広まったようです。

 債券市場で試算される期待インフレ率は2.5%を割り込み、長期金利は1.6%前後の小幅なレンジにとどまっています。

 こうした動きを受け、株式市場ではグロース株を象徴するナスダックに底入れ感がみられます。

 図表3は、S&P500指数、ナスダック100指数、フィラデルフィア半導体株指数の推移を示したもの(2011年初=100)。S&P500やナスダック100が持ち直した他、半導体株が急反発している点に注目したいと思います。

<図表3:長期金利の安定で米国株に持ち直しの動きも>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2020年11月初~2021年5月26日)

 世界中でデジタル化が進むなか、半導体産業は需要拡大を受け収益見通しが成長トレンドを鮮明にしています。

 図表4は、フィラデルフィア半導体株指数、ナスダック100指数、S&P500指数ベースの予想EPS(12カ月先予想1株当たり利益:市場予想平均)の推移を示したものです(2017年初=100)。

 スマホ、PC、ゲーム機器、IoT、5G、クラウド、データセンター、FA、AI、EV、自動運転車を含む幅広い分野でのDX(デジタル・トランスフォーメーション)に必要な高機能・高速・大容量の半導体とその製造技術は、コロナ禍が加速させた構造変化の後押しもあり需要が拡大しています。

 米半導体業界で時価総額最大のエヌビディアは26日に2-4月期の決算を発表し、売上や利益が市場予想平均を上回りました。

 画像処理半導体分野で最大手の同社は、ゲーム機器やAI向け半導体需要の好調が続き、コロナ禍で広がった在宅勤務はコロナ収束後も定着しPCやデータセンター向け需要が続くとの見方を示しました。

 冒頭で述べたように、中国当局は仮想通貨について「実物資産の価値による裏付けがない」と断じました。一方、リスク資産としての株式の特徴として、「利益成長期待に沿ったトレンド(リターン)」が期待できる点を再認識したいと思います。

<図表4:半導体株とナスダック100の利益見通しは拡大傾向>

*予想EPS=株価指数ベースの12カ月先予想EPS(市場予想平均)
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2017年初~2021年5月26日)

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