米国市場はバイデン政権が打ち出した「増税計画」を警戒

 高値圏で推移している米国株をいったん反落させる可能性があるリスク要因として、バイデン政権の増税計画が挙げられています。

 バイデン米統領は、28日(日本時間29日午前)に上下両院合同会議で行った初の施政方針演説で、低・中間所得者層支援を軸とする「米国家族計画(American Families Plan)」を発表しました。

「格差是正」を印象付ける新たな社会保障拡充策の歳出規模は1.8兆ドル(約195兆円)とされます。財源の一部を確保するため、高所得者層の所得税率上限やキャピタルゲイン税を引き上げる増税案を打ち出しました。

 こうした課税強化案は、関係者への取材で予め報道され、20日に株価を急落させた経緯があります。バイデン政権が既に表明していた連邦法人税率の引き上げ案と併せ、企業の税引き後利益や株式市場の売買動向に影響を与える可能性が懸念されています。

 特にキャピタルゲインの増税計画は、高所得者層(年間所得100万ドル以上)に対する税率を約20%から39.6%に「倍増」させる案となっており、増税前に株式や株式投信の売却に踏み切る投資家の売り圧力が不安視されています。

 ただ、こうした増税案は、反対する野党・共和党に加え、与党・民主党中道派の一部からも見直し論が出ています。市場は今後、大統領府と議会の駆け引きと増税幅(率)を巡る決着を注視する動きとなりそうです。

図表3:バイデン政権が打ち出した経済対策と増税計画

出所:各種の報道と情報より楽天証券経済研究所作成

 バイデン大統領が打ち出したキャピタルゲイン税率引き上げの対象者(年間所得100万ドル超の高所得者層)は米国の納税者数全体の0.3%でしかないとの試算もあります(米国国家経済会議)。

 一方、2022年11月に予定されている中間選挙を控え、格差是正を支持する民主党支持者や中・低所得者層に一定の訴求力があるとみられます。総じて金融取引税が引き上げられる(実効日が決定する)際は、株式は一時的にせよ下落するとの警戒感が根強くあります。

 1月20日に就任したバイデン大統領と株式市場との「ハネムーンマーケット(蜜月相場)」は節目とされていた「就任後100日」を迎えました。昨年11月にスタートした強気相場が、5~6月にいったんの調整を余儀なくされる可能性は意識しておきたいと思います。


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