中国国内の不動産開発に規制強まる

 まずは一つ目です。金融緩和政策、積極財政政策が正常化に向かっています。景気回復の原動力の一つとなった不動産開発に対しては、年初から融資の面で規制を強める政策が出ています。地方の一部の金融機関の中には、債務の返済に窮するところも出始めていますが、その理由がずさんな経営にあるようなケースでは、中国当局は救済しないでしょう。

 また、これまでは、アリババを筆頭に多くのハイテク企業に対して、政府がイノベーション重視の方針から、法律を多少逸脱していても世の中を変える試みを大目に見るようなところがありましたが、それも正常化に向かっています。

 長期的な成長力を高めることになるだろう政策の正常化なのですが、短期的には投資家たちの期待で膨らんだ高い成長率、企業業績の見通しを下方修正しなければなりません。

 そうしたファンダメンタルズ要因のほかに、流動性資金の縮小効果も加わり、それらが株価の動きを重たくしています。

米中関係はより緊迫

 二つ目は米中関係が緊迫化していることです。バイデン米政権が誕生すれば、トランプ政権時代、特にその末期に実施された厳しい対中政策は緩和されるのではないかと多くの市場関係者たちは期待したのですが、結果は皆さんがよくご存じの通りです。

 華為技術(ファーウェイ)を始め、中国ハイテク企業に対する禁輸措置、米国市場からの締め出しなども影響がないわけではないのですが、それよりも心配なのは新疆ウイグル自治区を巡る人権問題や、「一つの中国」の原則に触れることになる台湾問題の方です。米中両国が対応を誤れば、株式市場だけでなく、世界経済に大きなダメージを与える紛争につながりかねないからです。

株式市場にどう影響するか

 今後の長期的な株式市場の見通しを考える上で、一つ目の点はむしろ好材料です。当局が正しい経済運営を行っていると考えられるからです。二つ目については悪材料でしかありません。ですから、これ以上、米中関係の緊迫化が進んでしまうのかどうかという点についてしっかりとした見通しを持つことが重要です。

 この点については、多面的な分析が必要でしょうが、今回は最も本質的であると思われる経済の側面から筆者の考えを述べておきます。