変化が激しい時代、人生や市場と向き合うためには、過去と決別し続けることが必要

 社会に出ると、景気の良かった過去に執着する人に出会ったり、株価や金価格が教科書通りに動かない事象を目の当たりにしたりすると思います。これらを理解・説明するためには、2つのフィルターが有用であると書きました。

 これらのフィルターを用いることは、物事を一歩引いて見ること、つまり、物事を俯瞰する(ふかんする。物事を点で見ない。空から見下ろすようにしてさまざまな材料に同時に目を配る)意味を含んでいます。

 現代社会で起きている事象は、昔のように単純ではありません。昔は、AならばB(例えば、株価上昇→好景気、有事→金価格上昇)と、事象を単純な命題で説明することができました。今は違います。景気の良かった過去の感覚・考え方では、今を正しく知り、将来を展望することはできません。

 社会はなぜ、そんなに大きく変化したのでしょうか? 主には2003年ごろからはじまった、コモディティ市場をめぐる複数の環境の変化が要因とみられます。

図:コモディティ市場の常識の変遷

出所:筆者作成

 また、以前の「ルビコン川を渡った人類の行動がもたらす金(ゴールド)市場への影響」で書いたとおり、先進国の債務の増加が社会のゆがみを大きくしたり、世界のネット人口の増加が社会の分断を深めたりしていることも一因に挙げられると、考えられます。

図:世界の人口、米国の債務証券残高、世界のインターネット人口の推移
※2020年を100として指数化

出所:各種資料より筆者作成

 人類の果てしない“富の追求”が、社会を後戻りできない大規模な変化に導き、社会の重要インフラの一つである“市場”が大きく変化した、と考えられます。そして、新型コロナの感染拡大が、変化のスピードを大きく加速させたと考えられます。

 このような変化が激しい時代を生きるために必要なことは何でしょうか? 筆者は、今のところ、過去や誰かに依存する密になってはいけない3つの要素から得られた、以下の“密になるべき3つの要素”がその答えだと考えています。

図:密になるべき3つの要素

出所:筆者作成

 この、“密になるべき3つの要素”は、市場を観察する時だけでなく、人生を歩む上でも、参考になると思います。筆者はまだ43歳ゆえ、まだまだ(まだまだ)発展途上ですが、世界的にも激動といえる変化が生じた20余年間、社会人として生活を送ってきて感じていることは、人生で重要なことは、いかに自分を過去から切り離すか、ということです。過去の失敗にも成功にも、執着してはいけません。重要なことは、今(厳密には、非常に近い将来)を凝視することだと思います。

 過去に執着せず、今を凝視することは、人生、そして市場と向き合うために必要な考え方です。