「タンス預金が増えた」は、なぜわかる?

 現金の保有額だけでも複雑ですが、さらに「タンス預金が増加している」と言うからには、日常の取引に使われていない現金が増加していることを確認する必要があります。

 タンス預金についてはさまざまな推計方法があるのですが、簡便な方法としては、取引に使われている現金を千円札とみなして、現金の伸び率と千円札の伸び率を比較する方法があります。

 千円札の伸び率を上回っている分は、取引に使わない、貯蓄や予備的動機による「タンス預金」とみなす訳です。日本銀行「通貨流通高」で、2019年12月末と2020年12月末の千円札の発行枚数を比べると、1年間で千円札の発行は154億円減少していました(▲0.3%の減少)。

 電子決済が増えていますし、飲み会で割り勘にする機会も減ったし、旅先で使うことも減ったなどの理由が考えられます。そうなると、家計が保有する現金が増加したのは、「タンス預金」によるものだろう、と考えられる訳です。

 資金循環統計は奥が深い統計なので、さまざまな情報を得ることができます。また、他の統計や情報と組み合わせることで、金融面から実体経済の動きを考えることにも役に立ちます。

 金融構造を把握し、これからの投資戦略を考えたいという方は、日本銀行の公表資料を参考に、自ら分析してみることをお勧めします。