資金循環統計から家計の投資スタンスを探る

 コロナ禍で在宅勤務が増えたことや、一律定額給付金の支給などもあって、家計(個人)の株取引が増えたと報じられました。実際、ネット証券では口座数が増加し、多くの方が新規に取引を始めました。では、どのぐらい家計の資産増加に寄与したのか、資金循環統計で確認してみましょう。

 2019年12月末の家計が保有する株式等・投資信託受益証券は270兆円、2020年12月末では275兆円です。昨年は株価が落ち込んだ後に大きな戻りを見せ、TOPIX(東証株価指数)は12月末終値を比較すると4.8%上昇しました。取引参加者も増えた割には、資産はたいして増えていないようです。

▼家計が保有する株式等・投資信託受益証券の推移(単位:兆円)

(出所)日本銀行「資金循環統計」より筆者作成

 資金循環統計で確認すると、株式等・投資信託受益証券の取引額(家計の購入額)は1年間で0.1兆円しか増えておらず(売買は相殺されて記載)、調整額(時価評価)が5.0兆円も寄与したことが分かります。

 また、調整額がマイナスの局面、つまり、相場の下がり局面で買い、上がり局面で売る傾向があるようにも見えます。