株を売って、投資信託を買った日本人

 株式等・投資信託受益証券は、上場株式、非上場株式、その他の持分、投資信託受益証券を合計した項目なので、それぞれの取引項目別に残高の増減要因を調べることができます。

 そこで、2019年12月末から2020年12月末の変化を調べると、取引が容易な上場株式と投資信託受益証券とで取引額の増減が逆になりました。

▼株式等・投資信託受益証券の増減要因(単位:兆円)

(出所)日本銀行「資金循環統計」より筆者作成

 2019年12月から2020年12月にかけて、家計は上場株式を売り越している一方、投資信託受益証券は買い越しです。iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)や積み立て投信、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の影響があるのかもしれませんし、上場株式では、個人は逆張りしがちな傾向が表れているのかもしれません。

 2008SNA基準で比較できる2005年3月からの時系列データで取引額と調整額の相関係数を求めると、以下のようになりました。ここには、個人投資家の興味が増している対外証券投資(外国株式など)も載せています。

▼取引額と調整額の相関係数

(出所)日本銀行「資金循環統計」より筆者作成

 これを見ると、上場株式の取引額と調整額の相関係数は▲0.63と高めの逆相関を示しています。株価が上昇しているときに売り、株価が下落しているときに買う傾向があるという逆張りが見て取れます。

 対外証券投資には外国株式のほか、外国債券、外国籍の投信が含まれているので、外国株式だけであれば、日本株と同じように逆張りの傾向が強く出るのかもしれません。

 長い目で資産形成を考えるのであれば、相場に一喜一憂して売買を繰り返すよりも、節税効果のあるiDeCoなどを利用して積み立てた方が良いように思えます。