失敗できない最初の決算

 IPOする企業は、ビューティーコンテストのように良いストーリーを競います。つまりスタート地点では誰もがキレイに見えるわけです。でも、足腰の弱い企業がその馬脚を現すまでには1年とかかりません。なぜなら悪い会社は、決算を取りこぼすからです。まるで蚊取り線香を嗅(か)いだ蚊のように、ポトポト落ちる会社が続出します。

 IPOで上場会社として産声を上げた若い企業は、最初の決算から、すぐに試されます。とりわけ上場後初の決算は、絶対に失敗できません。

 これはなぜかと言えば、最初の決算の予想数字は、引受主幹事から「なるべくサバを読んだ、楽勝で達成できる数字を言ってください」と釘を刺されているからです。

 まるで八百長のように、初めから低いハードルを経営者自身が設定できるわけですから、その低レベルの目標すら達成できない経営者は、無能というレッテルを貼られても仕方ありません。

 ところが、驚くほどたくさんの企業が、そういう失敗をしでかします。「三つ子の魂百まで」ということわざがありますが、ダメな会社は、いつまでも学習効果なく、だらしない決算を続けます。

 機関投資家は、IPOされる若い会社の過半数が、そのような情けないグループに属する企業であることをよく心得ているので、少しでも問題を嗅ぎ付けたらサッサと逃げ、再びその会社に戻ってくることはありません。つまり企業は投資家からワンチャンスしか与えられないということなのです。

 普通、機関投資家から愛想を尽かされた株は「ペニー・ストック」と言って二束三文の株価に落ちます。そのような株は安定株主が存在しないので、個人投資家の噂一つで株価が右往左往する、仕手性の強い株になり下がります。

 そのようなゴミ株になった後でも、淡い期待を抱き続けてそんな株を抱き続ける人が多いですが、最初の決算でミソをつけるようなダメ会社の株価は、あっという間に半値になるし、そのようにIPO後、超特急で株価が半値になるような株は、そこから倍返しするどころか、さらにそこから株価が半分になるリスクも極めて高いのです。

 もし、あなたの投資した若い企業が、そのような決算の取りこぼしをしたら……その時はすぐに、その株を処分した方が良いと思います。