消費者のネット通販へのシフトが加速

今回の決算発表シーズンで小売各社から聞かれたコメントとして「消費者のネット通販へのシフトが、ここへきて加速している観がある」ということが目立ちました。

ネット通販は今日に始まったことではありません。しかし去年は消費者の行動の変化がショッピングモールの客足減など、極めて顕著なカタチで現れ始め、小売各社の経営陣を浮足立たせています。

各社は大急ぎでオンライン・ストアを強化しています。さらにショッピングモールの実店舗を整理・縮小するなど、もう一段、踏み込んだ対応を次々に発表しています。

国境税調整

現在、下院は税制改革法案を審議中です。去年の6月に発表された下院案「Better Way」は、国境税調整(Border Tax Adjustments)という項目を含んでいます。

国境税調整は1)輸入品に一律20%の関税をかける、2)輸出に関しては法人税を課さない、という二段構えの措置によりアメリカ企業の輸出振興を行おうという案です。

国境税調整は米国内に工場を持つメーカーなどにとっては大変ありがたい制度です。

しかしウォルマートに代表される小売業は、中国などの賃金の安い国で作られた安価な製品を輸入し、それを販売することで商売が成り立っています。

いきなり仕入コストが20%跳ね上がると、それを顧客に転嫁できる保証はありません。

店舗に並んだ商品の値段が高騰したのを見て、来店客の買い控え行動が出ることが心配されます。

もちろん、中期的に見れば、すべての輸入品に一律20%の関税がかけられるので、どこへ行っても値上がりするため、企業間のマーケットシェアの変化など、競争地図への影響は余り無いのかもしれません。

しかし一時的にせよ商品が動かなくなると、小売業者の在庫、マージン、資金繰りなどに大きな支障が出ないとも限りません。

そういう危機感を背景に、小売各社はこの法案に大反対の論陣を張っており、同法案を葬り去るべくロビー活動に奔走しています。