9:習近平氏の権力基盤を脅かす人物・勢力は見られない

 中国共産党の正統性を見積もる上で、党の核心である習近平氏がどの程度権力基盤を強固にしているのか、そこに風穴をあける人物や勢力はいるのか、というのは非常に重大な問題です。なぜなら、中国共産党内での権力闘争が激化すれば、当局として地に足の着いた理性的な政策を実行するための基礎が揺らぐからです。

 既存の政治体制や発展モデルが良いか悪いかは別として、中国では、政治、政権、政局の安定は、政府がマーケットの安定的推移・成長を保証する政策を実行するための前提なのです。その意味で、中国共産党研究を日課とする私から見ても、少なくとも党内に習近平氏の地位を脅かす勢力や人物は見当たりません。仮に政権運営が厳しくなるとすれば、それは反対勢力との権力闘争が原因ではなく、政策の失敗を引き金とする可能性が高いのです。

 そして、「政治の安定は政策の成功を保証する」という中国の国情を考えれば、2021年の中国政治はマーケットにとっては追い風という見方ができるでしょう。

10:経済外交は加速する。バイデン米政権の「アジア回帰」に注目

 前述のコロナワクチン開発を含め、2021年、中国の経済外交は加速するでしょう。先日、8年間の交渉を経て調印したRCEP(東アジア地域包括的経済連携)をめぐっては、中国はあくまでもASEAN(東南アジア諸国連合)のイニシアチブを重んじると言っていますが、各国がコロナ禍にある現状下、中国は自国の経済力を周辺地域に浸透させようとするでしょう。

 11月のAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で、習近平氏が初めてTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への加盟を積極的に検討すると表明した事実には、バイデン新政権になって、米国が再び東アジアへの経済的、外交的、戦略的関与を強める可能性があり、事前に牽制(けんせい)しておきたいと考慮したのでしょう。

 中国が関税撤廃や投資の自由化といった政策を通じて、域内経済への貢献度を強めるのは前向きな現象ですが、地域経済をめぐる米国との覇権争いを演じるようであれば、それはマーケットにとっても不都合な真実。2021年、中国の経済外交がバイデン新政権の米国とどう共存、融合するかに注目したいところです。