1:経済のV字回復で中国共産党の正統性が強化

 本連載でも言及してきましたが、私たちが中国を理解するために欠かせないのが、約9,200万人もの党員を抱える世界最大の政党・中国共産党が何を考え、そして民主選挙で選ばれていない党自らの正統性をどう確保しようとしているか、という2点です。その意味で、経済成長そのもの、それによってもたらされる雇用や消費は、正統性を守る上で最も重要な指標という現状は変わりません。

 コロナ・ショックに見舞われた2020年を振り返ると、第1四半期(1~3月)の実質GDP(国内総生産)は▲6.8%(前年同期比)でしたが、その後の第2四半期(4~6月)は+3.2%(同)、第3四半期(7~9月)は+4.9%(同)まで回復。2020年通期のプラス成長は確実で、+2~3%程度の成長率が見込めるでしょう。

 2021年は、第1四半期を中心にV字回復する可能性大で、中国政府が近年掲げてきた年5~6%程度の目標を上回る、年8%以上の経済成長率が見込めるでしょう。マーケット全体にとっては言うまでもなくプラス要因、特に、中国国内の消費関連銘柄には期待できるでしょう。

2:3月開催予定の全人代で経済目標の発表がある

 中国政府が毎年3月、国務院総理(現在は李克強[リー・クォーチャン]首相)の名義で経済成長率目標を発表する舞台が全国人民代表大会(通称「全人代」)です。

 2020年はコロナ禍もあり、例外的に開催が2カ月半延期になり、しかも経済成長率目標が発表されないという異例の事態に陥りました。

 しかし、新型コロナウイルスの感染抑制と経済回復に相当程度成功している現状から判断する限り、2021年の全人代は例年通り3月に開催されるでしょう。私の考えでは、経済成長率目標も80%の確率で公表されるでしょう。20%を保留した理由は、国際社会全体がいまだコロナ禍から立ち直れておらず、特に、欧米先進国における経済状況が不透明かつ不確実で、そこが中国の経済成長に与える影響を予測できないと、当局が考える可能性があるからです。

 いずれにせよ、3月は注目の月です。そこで経済成長率目標が発表されさえすれば、その数値はマーケットの自信や期待を後押しするものになるでしょう。