4:バイデン政権発足で米中二大国は“安定的”に競争する
先月書いたレポートでも整理しましたが、バイデン米政権発足で、米中関係は少なくともトランプ政権時よりは安定的に、予見可能な形で推移するでしょう。トランプ氏が上方修正した対中輸入品への関税を、バイデン氏が以前の水準に戻すとは限りませんし、香港、人権、南シナ海といった問題では、バイデン政権はトランプ政権以上に中国に対して強気で挑むでしょう。バイデン政権が世界各地における同盟国やパートナーとの関係を再構築しながら「中国包囲網」を築くシナリオを、中国は警戒しています。
ただ、競争するにしても、それは米中が互いの心理や動機を把握した前提での「競合関係」という色彩が濃く、マーケットにとっては、米中二大国間の一挙手一投足に常時振り回されるリスクは軽減するでしょう。
5:アントフィナンシャルの「上場復帰」は現実味がある
以前のレポートでも報告した「アントフィナンシャル上場延期」はマーケット関係者を震撼(しんかん)させ、中国政府による市場規制を含めた政策に疑問が投げかけられました。この間、私も多くの市場関係者、機関投資家から当局がアント上場延期を迫った背景について聞かれました。中国政府が、ネット金融やIT新事業といった分野における管理監督ルールの欠如が、関連企業の市場独占や市場秩序の混乱を招く状況を懸念しているのは事実。アントに上場延期、そしてビジネスモデルの修正を迫った理由は政策の次元によるものです。
ただ、これをもって、中国政府がネット金融やITといった分野を含めた新興企業や、それらの上場に否定的という解釈は腑(ふ)に落ちません。中国政府はこれまで以上に直接金融の比重を向上させる、そのために株式市場を盛り上げるという政策を取っています。アントは政府と市場との関係を含め、2021年、より良い形での上場を目指し動いてくるでしょう。
6:国内での政治的引き締め、対外的強硬姿勢は続く
中国共産党が、「政治の季節」において最も警戒するのが国内における政治的不協和音です。市場や世論に対して影響力のある、リベラルな知識人や実業家が中国共産党の政策や体制を批判し、それが民間から歓迎され、流通していく局面を非常に恐れ、そういう流れを作り得る人物、勢力に目を付け、状況次第では拘束したりもします。
これからの2年間、当局はそういう「異端勢力」を取り締まる意味でも、言論空間や市民社会への引き締めを強化するのは必至です。そのため、政治的に自由な議論はしにくくなります。
と同時に、香港、台湾、南シナ海といった、中国にとっての「核心的利益」に関わる問題では妥協せず、断固として自らの主権や発展利益を死守しようとするでしょう。
この過程で、西側、欧米諸国と外交的にもめる可能性は大いにあり、マーケットにとっても軽視できない地政学リスクは2021年も健在です。中国の対外的攻勢を注視しつつ、市場に参画すべきです。