米大統領選をめぐる思惑で、米国株が乱高下

 10月に入ってから、米国株は上昇していますが、途中、米大統領選をめぐる思惑で、乱高下しています。

 大統領選で、民主党候補のバイデン氏は、法人増税を明言しています。一方、トランプ米大統領は、さらなる法人減税に意欲を示しています。そこだけに注目し、株式市場では当初、トランプ再選なら株高、バイデン勝利なら株安、とのセンチメントが主流でした。

 そうした中、トランプ大統領の新型コロナ感染が判明、一時入院すると、バイデン氏勝利の可能性が高まったとして、米国株は一時下落しました。ただ、トランプ大統領がすぐ退院すると、米国株は反発しました。

 ところが、その後ホワイトハウス(大統領府)で感染者が続出すると、「安全対策を軽視していた」トランプ大統領への批判が高まりました。トランプ大統領の支持率が一段と低下、バイデン氏勝利の可能性が一段と高まりました。

 ところが、民主党勝利の可能性が高まったと判断される中で、米国株は続伸しました。民主党勝利を当初嫌気していた株式市場が、民主党勝利でも株高はあると解釈するようになりました。バイデン氏が大統領選に勝ち、大統領選と同時に行われる議会選挙で上・下院ともに民主党が過半数を握れば、バイデン氏が大胆なコロナ対策を打ち出しやすくなるとの見方が背景にあります。

 下院は今、民主党が過半数を握っていますが、上院では共和党が過半数を握っています。バイデン氏が大統領選に勝ち、上・下院ともに民主党が過半数を握れば、完全な民主党支配が実現します。そうなると、民主党は、法人増税の前に、コロナ対策の財政出動を決め、さらに、大型公共投資でインフラ整備を打ち出すという見方が広がりました。

 大統領と同じ政党が議会を押さえれば、大統領は議会の協力を得て、大胆な政策を実現しやすくなります。大統領の政党と、議会を支配する政党が異なると、大統領は政策実行が難しくなります。それが、いわゆる「ねじれ議会」の問題です。

 トランプ大統領が、大統領に就任した2017年には、上・下院ともに共和党が過半数を握っていました。したがって、トランプ大統領は大胆な政策をどんどん実行しやすかったと言えます。ところが、2019年の中間選挙で、下院で民主党が過半数を奪還し、ねじれ議会となりました。このため、2019~2020年、トランプ大統領は、下院の協力を得にくくなり、政策が滞ることが多くなりました。今も、コロナ対策の継続が議会でまとまらないことが、米景気に不安材料となっています。

 仮に、バイデン氏が大統領選に勝利し、上・下院ともに民主党が過半数を取るならば、バイデン大統領のもとで、コロナ対策のための財政出動を一段と強められると考えられます。米国株はその可能性を好感しました。

日本株は、長期投資で買い場の見方、継続

 日本株は割安で、長期的に買い場との判断を継続します。米大統領選でバイデン氏が本当に勝利するか、まだ予断を許しません。同時に行われる米議会選で、下院・上院を押さえるのは民主党か共和党か、結果次第で、米国株にさまざまな波乱があり得ます。

 日経平均もこれからも乱高下が予想されますが、来年にかけて世界景気が回復、日経平均もいずれ上昇トレンドに入っていくとの見方は、継続します。

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