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日経平均は戻り高値。米大統領選が及ぼす米株、日本株の影響は?

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欧米株が戻り歩調、日経平均はボックス上放れを試す

 先週の日経平均株価は、1週間で589円上昇し、2万3,619円となりました。一時2万3,725円まで上昇、コロナショック後の戻り高値を更新しました。以下の日足チャートをご覧いただくとわかる通り、日経平均は8月半ば以降、2万3,000円から2万3,600円の狭いレンジで膠着してきましたが、ボックスの上放れを試しつつあるところです。

日経平均日足:2020年5月1日~10月9日

 

 9月に入ってから、米ナスダック総合指数が売られ、続いて欧州株も売られたことが日経平均の上値を抑えてきました。10月に入り、欧米株が買い戻されてきたことを受けて、日経平均も上値をうかがう動きとなっています。

ナスダック総合指数:2020年5月1日~10月9日

 ナスダック総合指数は、GAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル・マイクロソフト)と言われる大型ハイテク株の構成比が高いため、8月まで、世界中の投資マネーを集めて、連日のように最高値を更新していました。コロナ禍でリモートワーク、リモート会議などITを使った技術革新が世界中に広がったため、成長期待がさらに高まりました。

 ただし、7~8月は、時価総額2兆ドル(約212兆円)を超えたアップル株が、あたかも小型株のように軽く急騰するなど、上昇ピッチが速過ぎました。そのため、9月には、利益確定売りが集中し、急落しました。足元は、利益確定が一巡し、反発しつつあります。

9月以降の欧米株式と、日経平均の動きを比較

 日経平均は9月以降、米国・欧州株が調整する中、相対的に堅調でした。10月に入って欧米株が反発する中で、下値を切り上げてきたところです。

東証マザーズ・日経平均・独DAX指数・NYダウ・米ナスダック総合指数の動き比較:2020年9月1日~10月9日

注:9月1日の値を100として指数化

 9月に入ってから、まずナスダック総合指数が、急落しました。さらに9月半ばから、ドイツDAX指数など、欧州株が売られました。欧州での感染再拡大が嫌気されました。

 ただし、9月の日経平均は、売られそうになっても、買い戻され、堅調に推移してきました。【1】欧米に比べ日本は感染拡大を小幅に抑えられていること、【2】スガノミクスへの期待、【3】中国景気回復の恩恵を受け製造業に回復の兆しが出ていること、などが日本株を下支えしてきました。

 日経平均は10月に入り、欧米株の戻りに合わせて、下値を切り上げてきました。ただし、欧米株が戻り高値を更新したわけではないので、日経平均の上昇には勢いがありません。11月3日に実施される米大統領選の結果次第で、さまざまな波乱があり得ることも、気迷いを生じています。

米大統領選をめぐる思惑で、米国株が乱高下

 10月に入ってから、米国株は上昇していますが、途中、米大統領選をめぐる思惑で、乱高下しています。

 大統領選で、民主党候補のバイデン氏は、法人増税を明言しています。一方、トランプ米大統領は、さらなる法人減税に意欲を示しています。そこだけに注目し、株式市場では当初、トランプ再選なら株高、バイデン勝利なら株安、とのセンチメントが主流でした。

 そうした中、トランプ大統領の新型コロナ感染が判明、一時入院すると、バイデン氏勝利の可能性が高まったとして、米国株は一時下落しました。ただ、トランプ大統領がすぐ退院すると、米国株は反発しました。

 ところが、その後ホワイトハウス(大統領府)で感染者が続出すると、「安全対策を軽視していた」トランプ大統領への批判が高まりました。トランプ大統領の支持率が一段と低下、バイデン氏勝利の可能性が一段と高まりました。

 ところが、民主党勝利の可能性が高まったと判断される中で、米国株は続伸しました。民主党勝利を当初嫌気していた株式市場が、民主党勝利でも株高はあると解釈するようになりました。バイデン氏が大統領選に勝ち、大統領選と同時に行われる議会選挙で上・下院ともに民主党が過半数を握れば、バイデン氏が大胆なコロナ対策を打ち出しやすくなるとの見方が背景にあります。

 下院は今、民主党が過半数を握っていますが、上院では共和党が過半数を握っています。バイデン氏が大統領選に勝ち、上・下院ともに民主党が過半数を握れば、完全な民主党支配が実現します。そうなると、民主党は、法人増税の前に、コロナ対策の財政出動を決め、さらに、大型公共投資でインフラ整備を打ち出すという見方が広がりました。

 大統領と同じ政党が議会を押さえれば、大統領は議会の協力を得て、大胆な政策を実現しやすくなります。大統領の政党と、議会を支配する政党が異なると、大統領は政策実行が難しくなります。それが、いわゆる「ねじれ議会」の問題です。

 トランプ大統領が、大統領に就任した2017年には、上・下院ともに共和党が過半数を握っていました。したがって、トランプ大統領は大胆な政策をどんどん実行しやすかったと言えます。ところが、2019年の中間選挙で、下院で民主党が過半数を奪還し、ねじれ議会となりました。このため、2019~2020年、トランプ大統領は、下院の協力を得にくくなり、政策が滞ることが多くなりました。今も、コロナ対策の継続が議会でまとまらないことが、米景気に不安材料となっています。

 仮に、バイデン氏が大統領選に勝利し、上・下院ともに民主党が過半数を取るならば、バイデン大統領のもとで、コロナ対策のための財政出動を一段と強められると考えられます。米国株はその可能性を好感しました。

日本株は、長期投資で買い場の見方、継続

 日本株は割安で、長期的に買い場との判断を継続します。米大統領選でバイデン氏が本当に勝利するか、まだ予断を許しません。同時に行われる米議会選で、下院・上院を押さえるのは民主党か共和党か、結果次第で、米国株にさまざまな波乱があり得ます。

 日経平均もこれからも乱高下が予想されますが、来年にかけて世界景気が回復、日経平均もいずれ上昇トレンドに入っていくとの見方は、継続します。

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