10月に注目したい新興株の動き
新興株市場で最も重要になっている「流動性」でいえば、“まだいける!”な状態で10月に入っています。10月に入っても連日、マザーズの売買代金は2,000億円以上を記録しています。
マザーズ指数は年初来高値で、指数ベースでいえば全員含み益状態。ここまで積み上げた利確マネーも潤沢で、マザーズ銘柄の中で個人マネーは循環しています。この状況が続くなら、コロナ禍で始まったラリーは腰折れしないはずです。
引き続き、注目すべきは市場全体の売買代金と、マザーズ市場のモメンタム(マザーズ指数が大きくトレンドを崩さないかどうか)だけでしょう。
モメンタムという点でいえば、「マザーズ指数」という指数自体、過去と比べて崩れにくくなりました(そもそもは個人投資家の買い気が強いからですが)。
マザーズ指数の「続落」という現象が、9月9~10日を最後に約1カ月発生していません。地合いの悪い日に下げても、翌日にあっさりリバウンドする…これは“押し目買い意欲が強い”ということ。しかも、マザーズ指数が高値更新するような状態で押し目買い意欲が強いわけで、滅多にない優良地合いが続いています。
この溢れんばかりの株式投資熱(しかも短期で資産を増やしたい人が多い)で、心配になるのはIPOへの熱量が高過ぎることでしょうか。
流動性が高く、値動きが激しいことも確定しているため、格好の投機対象なのは分かりますが、8月末~9月初旬(ティーアンドエスやニューラル、サンアスタリスクがバブル化した時期)と同じことが10月も発生しています。
ティーアンドエス、ニューラルと2銘柄連続で、公開価格の10倍になるテンバガーを達成。これを、前回“伝説のIPOラリー”と称しましたが、どうやら“伝説”ではなく“ニューノーマル”のようで…。
9月29日上場のヘッドウォータースの初値は、歴代最高の初値上昇率(公開価格の11.9倍)を記録しました。初値でテンバガーが生まれたほか、続くアクシス、タスキも、業態など無視で小型IPOの“目指せテンバガー”的な現象が生まれています。
こうした投機に資金が集中し、マザーズ市場全体の売買代金の3割程度が、9月IPO(10月6日時点で6銘柄)で占拠されるような状態になっています。
8月後半にかけたIPOラリー時も、9月初旬にバブルが弾けると、新興株全体の需給を悪くした場面を作りました。ここが需給面では短期的な注意点でしょうか。
その他で心配な点を挙げるとすれば、東証1部の主力銘柄群で、下期相場に入って“物色の変化”が発生していること。
下期相場に入ったと同時に、東証1部の流動性トップ級銘柄では任天堂が逆行安。ゲームの大型株のほか、ドラッグストア株、ホームセンター株など幅広い「巣ごもり特需銘柄」が露骨に売られる現象が起きています。
巣ごもり需要で好調なニトリは、上方修正を発表後、明らかに“織り込み済み”的なネガティブ反応を示しました。巣ごもり需要で業績が伸びている銘柄に対し、今後の重要一服とか、業績モメンタムの停滞を先取る動きが出ているのかもしれません。
下期始まった直後ですので、機関投資家の行動(巣ごもり関連銘柄のウエイトを減らし、コロナ禍で業績悪化した銘柄の回復を期待してバリュー株のウエイトを増やす)とも想像されます。
ご存じの通りで、マザーズなど新興株市場は巣ごもりでゲームチェンジした銘柄ばかり。11月の決算発表シーズンに近づくなかで、これまで半年(2四半期)続いたように「好決算→株価上昇」という展開が続くのか? この辺りも気にすべきタイミングと思われます。
とはいえ、最初に戻りますが、今の個人マネーの勢いが続くなら“余計な心配”で終わる可能性も十分ありますが…。