(1)売買代金ランキング(5銘柄)

1 ティーアンドエス(4055・東証マザーズ)

 超好地合いの追い風に乗ったとはいえ、市場参加者の多くが驚いたセカンダリー急騰劇でした。

 8月7日に上場し、公開価格は2,800円で、初値は上場2日目に付けた7,010円。初値形成日含め、ここから怒涛(どとう)の12連騰。初値付けて12連騰するとか、過去にあったんでしょうか…。

 この12連騰の最終日8月26日に付けた2万9,260円が上場来高値ですが、公開価格のテンバガー(10倍高)を達成しました。

 市場参加者の多くが驚いた理由は、同社がシステム開発を主力とするシステムインテグレーターで、事業モデル的な新奇性があったわけでもないから。主要取引先はキオクシアや東芝などで、業績は安定しやすいものの、高成長は見込みづらいとみなされていました。

 ただ、需給要素では「ベンチャーキャピタルの持ち分がない」点が挙げられ、突発的な大口売りがこないと見越した短期勢の買いを原動力に、想像以上の勢いがついた…というところでしょうか。

 値がさ株になったことで、小口の個人投資家のエントリーが少ないことも需給引き締まりの理由といえそうです。

2 BASE(4477・東証マザーズ)

 前月に好決算を示したことで株価が一段上昇。ECシフトのメリット銘柄ですが、ネットショップの出店支援というニッチ分野のトップ企業ということで、目標とする時価総額が特にないことも上値追いの背景なのかもしれません。

 15日には、外資系証券が投資判断「ニュートラル」(目標株価1万円)で新規カバレッジを開始しました。ECの運営主体が大手企業から個人事業者へ広がるなか、ニーズが高まっている点などを指摘。目標株価は現行水準だったものの、海外投資家にBASEの存在を知らせるきっかけになった意味でプラス面が大きかったといえそうです。

 24日に、海外募集で120万株を公募増資すると発表しています。6%弱の希薄化要因になり、直後は株価も売られたものの…その下落分も月末にかけて全てリカバリー。

 株価がこれだけ上がったタイミングでの公募増資ですので、手取りでも約120億円の資金調達になります。この資金を広告宣伝や人件費などの成長投資に投入…コロナ禍の株高を活用してさらなる成長につなげる、新興系企業の理想モデルを示しました。

3 ニューラルポケット(4056・東証マザーズ)

 一つ前に上場したティーアンドエスが大化けしたことで、続くIPO(証券コードもティーアンドエスの次)の同社も大活況の幕開けになりました。

 8月20日に上場、公開価格は900円でした。同社の場合、AIソリューションの開発を主力とするIPO人気業態で、公開規模も5.7億円と小粒。初値高騰の要素は備わっていたとはいえ、上がり方が想像以上に強烈でした。

 上場3日目の8月24日に付けた初値は5,100円で、公開価格の5.7倍。これ自体すごいですが、初値付けた日から3日連続ストップ高に…。上場6日目の8月27日に上場来高値1万850円を付けたのですが、ティーアンドエスに続き(ティーアンドエスより早く)公開価格のテンバガーを達成しました。

 テンバガー達成後に急落しており、今のIPOバブルは“公開価格の10倍”がターゲットになっているのでしょうか。9月も逆張りの買いなど交えながら、AI関連でトップの高流動性銘柄に。

4 ジーエヌアイ(2160・東証マザーズ)

 8月の月間89%上昇に続き、9月も50%上昇で上場来高値を更新しました。新型コロナウイルスのワクチンや治療薬開発のバイオベンチャーばかり当初盛り上がりましたが、どれも株価は急落。最後に残ったのは、既存パイプラインを着実に進展させた同社でした。

 8月の株価急騰材料になったのが、肝線維症治療候補薬のパイプライン「F351」のフェーズ2試験完了と、初期段階分析で良好な結果を得たとの発表。続報として9月29日、上海で開催された最終報告会で安全かつ効果的と結論付けられたと発表しています。

 次のステップに向け、中国の当局(国家薬品監督管理局)の医薬品審査評価センターに相談するとのことです。

5 ブロードバンドタワー(3776・ジャスダック)

 政府のデジタル化推進に伴う恩恵がありそう(実際あるかどうかは別として)関連銘柄として人気化しました。

 前月に、中間決算の営業利益が会社計画比で大幅上振れしたと発表(通期見通しは赤字据え置き)。株価が上昇基調にあるなか、9月に最も人気化したテーマ性が乗っかったこと、低位株だったことが奏功した格好で大相場に発展しました。

 同社役員の村井純氏(慶應義塾大学教授)と菅総理が面会し、デジタル庁創設などについて意見を交わしたと23日に伝わっています。

 このニュースも手掛かりにした23日に、5,180万株という今年最大の出来高を記録(発行済み株数の85%)。ただ、東証が28日から日々公表銘柄に指定すると発表しています。直近の買い主体、そのほとんどが個人投資家の信用買いだったようで…。